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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (4) チャドルと生きる

公開日: : ごまめのはぎしり, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (4) チャドルと生きる
2004年7月12日投稿 ゆ記

チャドルと生きる

ビデオのパッケージには頭からすっぽり黒い布に覆われた女性の姿。
イスラム社会の女性って、人前では身体を覆い隠す習慣があるために布をかぶっていますよね。
その布の中で、全身を覆うものをチャドルと呼ぶようです。
ということで、チャドルを身につけなければ外出もできないという社会に生きる女性たちのエピソードがつながって、ひとつの物語となっている映画「チャドルと生きる」。

舞台はイランの首都テヘラン。
ある産院では、誕生した赤ちゃんが女の子だと知らされ「検査では男の子だって言ってたのに!娘が離縁されてしまう!」とお母さんが嘆いています。
女の子を産んだから離縁だなんて・・・と思いながら外に目をやると、そこには刑務所から逃げてきたらしい3人の女性の姿が。
家族や恋人の待つ故郷へ帰るにも、身分証も同伴者もない女性はバスの切符を買うことすら許されません。

自宅に戻った別の女性も、実の兄弟に「この恥さらし!」と罵られ家を追い出されてしまいます。
刑務所にいた頃に知り合った友人を訪ねていっても、過去を隠して結婚し幸せに暮らしている友人には正直歓迎されていない様子。
他にも子供(これもまた女の子)を置き去りにしようとする女性、娼婦など、ワケあり女性が次々に登場してくるのですが、淡々とストーリーが語られ、とにかく一貫して暗いです。
登場する女性たちには最後まで何の救いも希望のかけらもありません。見終わって思わずため息。

社会のいろんな決まりごとによってつくられた円(原題はThe Circle)の中で、何の疑問も感じることなく生きている女性、疑問はあっても諦めて暮らしている女性、声をあげたためにはみ出してしまう女性・・・いまこの日本で好きな服を着て、行きたいところに行けて、やりたいことがやれるからこそ、「女性が抑圧されて男性の付属品のように扱われるなんて!女性に人権はないのかー!」と感じますが、もし私自身がこの円の中の住人だったら・・・おかしいと感じることがあったとしても「だってそういう社会だから。お母さんもおばあちゃんもそうやって生きてきたんだから。」と自分を納得させてしまうかもしれない、そんなことを考えました。

この作品、本国では上映が禁止されているそうです。
イランの女性たちがこの映画を見ることができたとき、彼女たちはいったい何を思うのでしょうか。

【原題】 The Circle
【監督】 ジャファル・パナヒ
【公開】 2000年 イラン

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