禁じられた歌声
禁じられた歌声
監督:アブデラマン・シサコ
2014年/フランス・モーリタニア映画/97分 配給:株式会社レスペ 原題:TIMBUKTU
【上映の情報】
http://kinjirareta-utagoe.com/theater.html
【予告編】
【映画の解説】
ボールのないサッカーのゲーム、音の聞こえない音楽、彩りのない衣装。人々にそう強いているイスラム過激派の兵士も同じ若者、サッカーも音楽も彩り鮮やかな衣装もほんとうは好きなのだ。途方に暮れたように見つめている表情は、そうした彼らの内心をありありと表している。
アフリカ、マリ共和国の砂の古都ティンブクトゥの人々に、そして遊牧の民のトアレグ族の家族に降りかかった悲劇、それは誰が悪いのか、誰も悪いわけではないのだが、という視点でこの映画は作られているようだ。ストーリィの中心となる家族の悲劇の原因を、直接イスラム過激派兵士とのぶつかりに置かなかった配慮もそうしたことから来るのかもしれない。むしろそうした悲劇は彼らの周囲で、断片的に伝えられ、集まり、積み上がって破局へと向かう。
この映画を見ていて強く感じたのは、イスラム国一帯を紛争に巻き込んだ過激派グループの兵士、指導者、その支配下にある砂漠の民、そのどちらにも悩みや迷いがあることをよく伝えていることである。街を制圧している過激派の指導者であっても信仰厚いものの前ではたじろぎ、迷い、自分たちのやっていることにぐらつく。
けして彼ら過激派が流す宣伝映像や、主にアメリカの劇場映画などに現れるテロリストのように、問答無用の狂信的主義者などではないのだ。当たり前のことだが誰もすべてがテロリストなどではないのだ。そのことを最もよく感じているのは、外部からの批判的な目ではなく、同じ土地に生き、その中にあって同じ境遇に苦しんでいる人間の視点をもっている作り手である。
しかしそれでも厳しい戒律、あるいは異端によって、その土地に生きた人々が積み上げてきた楽しみも、喜びも、幸せもことごとく壊され、抑圧の中に封じ込められ、いのちを失うのだ。
希望はないのか。イスラム過激派の兵士を含め若者が見せる「ためらい、迷い」の表情に、また、そのような描き方をした作り手に、その意図が見えてそこに期待をかすかに感じる。
(法学館憲法研究所ホームページ「シネマ・DE・憲法」より)
【公式ホームページ】
http://kinjirareta-utagoe.com/
ものがたり(公式ホームページより転載)http://kinjirareta-utagoe.com/story.html
アフリカ、マリ共和国のニジェール川沿いのティンブクトゥからほど近いある街で、少女トヤは、父キダン、母のサティマ、牛飼いの孤児イサンと、ささやかながらも互いに慈しみ合う幸せな生活を送っていた。そこにはいつも父の奏でる音楽があった。
しかし、街はイスラム過激派のジハーディスト(聖戦戦士)に占拠され、様相を変えてしまう。過激派は厳格なシャリア(イスラム)法と恐怖政治により 住民たちを支配してゆく。彼らは、音楽、笑い声、たばこ、そしてサッカーや不要な外出など次々に禁止し、毎日のように悲劇と不条理な懲罰を繰り返していく。
過激派たちの、住民への圧政はより色濃くなっていく。歌を歌ったという理由だけで女性は鞭打ちの刑に処され、その尊厳は踏みつぶされていく。
トヤの家族は、そんな混乱を避けて街の外れに避難する。キダンの8頭の牛の群れを遊牧するイサンは、幼いながらもこの仕事に誇りをもっていた。 特にGPSと名づけられた牛には特別の愛情を込めていた。
【映画情報】
スタッフ
監督・脚本:アブデラマン・シサコ
脚本:ケッサン・タル
音楽:アミン・ブアファ
キャスト
イブラヒム・アメド(キダン)
トゥルゥ・キキ(サティマ)
ファトウマタ・ディアワラ(ファトゥ)
イシューム・ヤクビ(ジハーディスト)
アベル・ジャフリ(アブデルグリム)
ケトゥリ・ノエリ(サブー)
メディ・A・G・モハメド(イサン)
ライラ・ワレ・モハメド(トヤ)
2014年 フランス・モーリタニア映画・97分
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