第80回 憲法を考える映画の会 『ガザからの報告』
第80回 憲法を考える映画の会 『ガザからの報告』
第80回 憲法を考える映画の会 『ガザからの報告』
日時:2025年 3月20日(休・木)13時30分〜18時00分
会場:文京区民センター3A会議室(地下鉄春日駅 2分・後楽園駅 5分)
■プログラム
13:30〜13:40 この映画について
13:40〜15:40『ガザからの報告』第一部 ある家族の25年上映(120分)
15:40〜15:50 休憩
15:50〜17:15 第二部 民衆とハマス上映 (85分)
17:20〜18:00 トークシェア
■参加費:一般 1000円 若者 無料
(会場でお支払いください。予約不要で、どなたでも参加できます。)
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第80回 憲法を考える映画の会 『ガザからの報告』案内チラシダウンロードはこちら
【作品の解説】『ガザからの報告』
第1部「ある家族の25年」(120分)
故郷を追われ、ガザ最大の難民キャンプ「ジャバリア」で暮らすエルアクラ家。
職につけず、結婚もままならない息子たち。家族と共に故郷へ戻れる日を待ち続けている父。
イスラエル軍の撤退、解放、パレスチナ自治政府の誕生――。
「和平」ムードに人々が歓喜する一方で、父は「これは本当の和平ではない」と怒り、
故郷への帰還を諦めて家の増築を始める。
パレスチナ初の選挙が行われ、インフラが整備されたガザで、
エルアクラ家の息子たちは仕事と家庭を持ち、新たな生活を送っていた。
しかし自治政府の独裁・強権政治と腐敗が深刻化し…。
第2部「民衆とハマス」(85分)
イスラエル国家を認めず、全パレスチナの解放、難民の帰還を掲げるハマス。
彼らは貧困に苦しむ家庭への食料配布や孤児の救済、女性の職業訓練、医療支援といった慈善事業と、
パレスチナ解放をめざす武装闘争の両面で民衆の支持を拡げてきた。
2006年の選挙と、翌年の内戦の勝利によってハマスがガザ地区を実効支配するようになると、
イスラエルは封鎖政策を強化。さらにはハマスの悪政も重なり、人びとはかつてない貧困に喘ぐことになる。
そして今回のガザ攻撃を受けた現地からの報告を元に、
インフラも人間も、すべてが破壊されてしまった現在のガザの厳しい現状を伝える。
2024年制作/110分/土井敏邦監督作品/ドキュメンタリー映画
(映画『ガザからの報告』公式ホームページより)
【なぜ今、『ガザからの報告』なのか──土井敏邦】
遠い国の人たちに起こっていることを伝えるとき、まず伝え手がやるべきことは、
現地の人々が私たちと同じ人間であることを視聴者、読者に伝えることだと私は考えている。
現在ガザで起こっている事態も、ニュースが伝える「死者4万人、負傷者約8万人」という数字に、
私たちは現場の実態を「分かった」つもりになる。
しかし一人ひとりが私たちと“同じ人間”であることを思い当たったとき、
あの空爆や砲撃で死傷した子どもたちの姿に「もし、あの子が自分たちの息子だったら、孫だったら」と想像できる。
その時、「死者4万人」という数字は、私たちと同じ人間の一人ひとりの“死の痛み” “悲しみ”の4万倍なのだ、
と言う認識に変わるかもしれない。
そういう伝え方をすることで、遠いガザで起こっている事態を、
日本にで暮らす私たちに“引き寄せる”ことができるのではないか。
私がやるべきことはそのための“素材”を提供することではないか。
そのためには、『等身大・固有名詞の人間の姿・日常生活』を、きちんと描かなければならない。
それに最も有効な方法が『住み込み取材』だった。
(映画パンフレット「なぜ今、『ガザからの報告』なのか」より)
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パレスチナ問題、ガザの問題について考えることを、自分はどこかで避けてきたように思います。イスラエル軍の攻撃にあって46000人ものパレスチナ人が死亡したこと、それも多くが市民、女性や子どもであることは報道等でも伝えられていました。どうしてこんなことが起こるのか、それを放っていていいものかとは考えていました。しかしずっと続いてきたここでの紛争に対し、歴史を見直し、どうすれば良いのかと考えても、途方に暮れてしまっていました。
長年イスラエルによって土地を奪われ、隔離遮断され、日常的に生命と生活を脅かされて続けているパレスチナ人の側にどちらかといえば味方する気持ちでいました。
それ以上は思考を止めていた自分ですが、この映画を見て自分の考え方自体がとらわれていたことがあると気づきました。
悲惨な映像が延々と続くと思っていたので、第一部「ある家族の25年」を見た後、そこで生活している人々のたくましさを見て、また、その中での苦しみや悲しみを知って、パレスチナの人々が、この紛争、あるいは闘いに抱いている気持ちに少し近づいた気がしました。
映画の後のトークでも、監督の土井敏邦さんは、「パレスチナ問題を知識としてとらえるのでなく、どの戦争でも苦しむのは民衆なのだということを知ってほしい」と話されていました。
パレスチナ問題は政治的に、また宗教的にも複雑で難解で理解しがたいものだと思い込んでいた私は、確かにそうだ、民衆一人ひとりの人の目でガザを、イスラエルを見ていかなければと気付きました。
1993年のオスロ合意の直後から、土井監督はガザのジャバリアのエルアクラ家に住み込んで取材を続けました。土井監督のそうした住み込み取材のねらいについても納得し、共感するものがありました。少し長くなりますが引用させていただきます。
それは、「遠い国の人たちに起こっていることを伝えるとき、まず伝え手がやるべきことは、現地の人々が私たちと同じ人間であることを視聴者、読者に伝えることだと私は考えている。
現在ガザで起こっている事態も、ニュースが伝える『死者4万人、負傷者約8万人』という数字に、私たちは現場の実態を『分かった』つもりになる。しかし一人ひとりが私たちと“同じ人間”であることを思い当たったとき、あの空爆や砲撃で死傷した子どもたちの姿に『もし、あの子が自分たちの息子だったら、孫だったら』と想像できる。その時、「死者4万人」という数字は、私たちと同じ人間の一人ひとりの“死の痛み”“悲しみ”の4万倍なのだ」という認識に変わるかもしれない。そういう伝え方をすることで、遠いガザで起こっている事態を日本で暮らす私たちに“引き寄せる”ことができるのではないか。」
「私がやるべきことはそのための“素材”を提供することではないか。そのためには、『等身大・固有名詞の人間の姿・日常生活』を、きちんと描かなければならない。それに最も有効な方法が『住み込み取材』だった。」(映画パンフレット「なぜ今、『ガザからの報告』なのか」より)
映画上映の後の会場からの発言にも、このようなものがありました。「2023年10月7日のハマスのイスラエルへの攻勢は、いわば真珠湾攻撃を行った日本軍と同じ暴挙だ。ハマスは自分たちが越境攻勢を行ったら、イスラエルに打撃を与えることは想像出来ても、パレスチナ(ガザ)の民衆がどうなるかは頭になかったに違いない。彼らは自分たちのことを守ろうとしか考えていないのではないか。権力者とはそういうものだろう。」「そしてそうした形で、他の国と国の間でも、いまもまた戦争が繰り返されようとしている。」
この映画はまた、第一部、「ある家族の25年」の中で、ガザへの直接による攻撃の酷さ、悲惨さだけでなく、仕事がなく、生きていけない若者たちの苦しみをも描いています。攻撃は、人が生きる基盤を奪っていきます。
戦争で苦しむのは、権力者ではなく、常に民衆です。だから戦争にどちらが正しいとか、勝った方が正しいとかそんなことは一切無い。負けるのは、被害を受けるのは、どちらも民衆です。戦争をやったこと自体が負けなのだという結論がここでも私の頭の中で広がっていきました。
ジャーナリストの立ち位置、あり方というものも、この映画は考えさせられます。
「ある家族の25年」は、ガザの25年、その中での人々の思いのことだけでなく、ガザのことを気にしていながら、何もしてこなかった自分の25年をも写しだして、自分を見つめるものになりました。
そうしたものを与えてくれるのが、ドキュメンタリーなのかも知れません。
【スタッフ】
監督・製作・撮影・編集:土井敏邦
整音:川久保直貴
デザイン:野田雅也 尾尻弘一
2024年制作/205分/日本映画/ドキュメンタリー 配給協力:リガード
公式ホームページ:
予告編:
上映情報: アップリンク吉祥寺にて不定期上映中
自主上映申込み案内:
(法学館憲法研究所「シネマde憲法」『ガザからの報告』から)
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