*

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (224) 映画『マリアのへそ』

公開日: : シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (224)
映画『マリアのへそ』
(初出2008年2月11日掲載・蓼沼紘明 記)

244マリアのへそ

貧困層が40%以上のフィリピン。首都マニラのストリートチルドレンのドラマです。高層ビルを背にした大都会の片隅の屋根のない路上が子どもたちの生活する場所です。登場する子どもたちは、すべて実際の路上生活者か、以前そうだった子どもたちの中からオーディションで選ばれました。学校にも行けない彼らの現実の生活がそのまま役柄になっています。

主役は6歳の少女マリア、12歳の兄ジョエル、16歳の兄アラニオの3兄妹。
兄妹の父はペディキャブと呼ばれる人力車の運転をしていましたが、事故に遭い働けなくなって、今は酒びたりの生活です。子どもたちは、道路での新聞売り、物乞い、捨てられた野菜などを拾って生きています。長兄のアラニオは駐車場の見張りなどの仕事をしています。夜になれば、4人の家族は身体を寄せ合い、一つのりんごに感激して4つに分けておいしそうに食べるなど、貧しいながらも楽しい食事の時間を過ごします。そして歩道上で川の字になって寝ます。母の行方を尋ねて山奥に出向くマリアとジョエルの姿は叙情的で涙を誘います。
そんな彼らの話を聞き、相談に乗り、道端で勉強を教えている青年がいます。自らもストリートチルドレンだったブッチ・ナージャが自ら出演して、存在感たっぷりに演じています。この映画は彼なくしてはできなかったそうです。

彼ら彼女らの生活は死や犯罪と背中合わせです。殴られ、轢かれ、そして病気が襲います。しかし、子どもたちの表情や仕草は生き生きしており、ユーモアとエネルギーが感じられます。とにかくマリアがくったくなく、元気です。

「日本人が忘れがちな家族愛や他人を思いやる心」「夢と希望を持つことの大切さ」を感じ取ってもらいたかったというのが製作者の意図ですが、それは十分に伝わってきます。「自分を信じよう」「生きることは人生に希望を持つことだ」とのセリフ。極限状況で必死で生きている人たちゆえに、この言葉が一層光ります。
そうは言っても、夢や希望は社会の支援がなくては適いません。グローバル化で私たちの生活はフィリピンの人たちのそれと一層無縁ではなくなったことを思うと、私たちにできることは何なのか、考えさせられます。

監督からのメッセージを紹介します。
「路上に生きる子供たちは世界に1億人はいます。貧困、家庭崩壊、戦争など様々な理由で子どもたちは路上生活を強いられるわけですが、いずれにせよ大人の社会の責任です。最も悲惨なのは、そうした子どもたちが無力で希望さえも失っていることです。私は、アジアの国々を訪れる度に、路上で健気に生きる子供たちを見て何度も危機感を募らせてきました。この映画を通して、路上の子どもたちに勇気を与えたいと考えております。そして、日本の子どもたちにも、メッセージを送りたいと思います。他人をいじめたり、引きこもっている場合ではありません。力強く生きて欲しいのです。」

【映画情報】
製作:2007年 日本
時間:106分
原題:MARIA’S NAVEL
監督:野澤和之
出演:リカ・フォルテュナ/エドワード・パテロス/ダーウィン・マルデイ/ブッチ・ナージャ

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

関連記事

チャドルと生きる

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (4) チャドルと生きる

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (4) チャドルと生きる 2004年7月12日投稿 ゆ記

記事を読む

153赤い鯨と白い蛇2

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (153) 映画 『赤い鯨と白い蛇』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (153) 『赤い鯨と白い蛇』 (初出2007年1月15日

記事を読む

sanga

いのちの山河 日本の青空Ⅱ

「日本国憲法」が施行されてから60年あまり。戦後の日本が60年以上もの間、かろうじて戦争をす

記事を読む

gobaku

GOBAKU アメリカは誰と闘っているのか?

■戦火のアフガニスタン、イラクを果敢に取材。オバマの戦争、その実態としくみを解き明かす

記事を読む

204さらばベルリン

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (204) 映画『さらばベルリン』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (204) 映画『さらばベル

記事を読む

35ニュースの天才

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (35) 『ニュースの天才』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (34) 『ニュースの天才』 (初出2005年1月3日掲載

記事を読む

裁判所前の男

映画「裁判所前の男」

映画『裁判所前の男』 監督:松原明 2015年/日本/65分ドキュメンタリー 制作・配給:ビ

記事を読む

519DqOVAzBL

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (139) 『父親たちの星条旗』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (139) 『父親たちの星条旗』 (初出2006年11月1

記事を読む

『ガイサンシーとその姉妹たち』『melos』の上映、上演を広げる会

公演「remembrance記録と記憶 ―中国と日本の表現者による未来への祈りの試み―」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(281) 公演「remembrance記録と記憶 ―中国と日

記事を読む

51DCzFC-1-L._AC_UF8941000_QL80_

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (241) 映画『つくられる自白―志布志の悲劇―』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (241) 映画『つくられる自白―志布志の悲劇―』 (初出

記事を読む

ad

ad


第90回「新・戦場の兵士」案内チラシ(2026年10月18日)20260916入稿時原稿オモテ
第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』

第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』 第9

戦場のレクイエム
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(285) 映画『戦場のレクイエム』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(285) 映画『戦場のレクイエ

242チェ 38歳別れの手紙
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(284) 映画『チェ 39歳別れの手紙』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(284) 映画『チェ 39歳別

283蟹工船
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(283) 映画『蟹工船』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(283) 映画『蟹工船』 (

282映画『そして、私たちは愛に帰る』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(282) 映画『そして、私たちは愛に帰る』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(282) 映画『そして、私たち

『ガイサンシーとその姉妹たち』『melos』の上映、上演を広げる会
公演「remembrance記録と記憶 ―中国と日本の表現者による未来への祈りの試み―」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(281) 公演「remembr

→もっと見る

PAGE TOP ↑