憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (223) 映画『ヒトラーの贋札』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (223)
映画『ヒトラーの贋札』
(初出2008年2月11日掲載・蓼沼紘明記)
第二次大戦では、日本軍も贋札作りを行いましたが、この映画は、ナチス・ドイツによるポンド紙幣とドル紙幣の贋札作りをスリリングに描いたものです。経済撹乱を狙ったドイツ軍の謀略工作の一つとして贋札作りを指揮したベルンハルト・クリューガー少佐(劇中ではヘルツォーク少佐)の名にちなんで「ベルンハルト作戦」と呼ばれています。贋造されたポンド札は極めて精巧で、その量は当時の全流通量の約10%にも上ったとも言われ、秘密工作や武器調達などにも用いられました。ドイツ降伏の際、ナチスは贋造紙幣をオーストリアの湖に沈めました。この全容が知られるようになったのは、1959年になってからです。
実際に贋造したのはザクセン・ハウゼン強制収容所に集められたユダヤ人技術者たちです。贋札作りに加わった印刷工で奇跡的に生き延びた印刷工アドルフ・ブルガーの著書が原作になっています。
ほとんどのユダヤ人収容者がガス室送りになっていた中で、贋札づくりの技術を持つブルガーら作業員は収容所内の秘密の工場に隔離され、特別の待遇を受けていました。ふかふかのベッド、温かい食事。しかし、彼らはその仕事を忠実に行う限りにおいて生かされていました。拒めば即ガス室送りや銃殺が待っています。自分の命か、ナチスへの協力をやめるか。彼らは苦しみ、葛藤します。仕事が成功したとしても、いずれ殺されることも分かっていましたが、今日を生きるためには仕事をせざるを得ない彼らたち。リーダー格の贋作師と協力に抵抗してドル紙幣作りを進めないブルガーの対立を軸に緊迫した画面が展開されます。
この映画はドイツ(とオーストリア)が制作しました。自らの過去の歴史の誤りを繰り返し問うドイツの開かれた国際性には大いに学ぶべきものがあります。
同時に、映画が訴える人間の尊厳への冒涜の戒めは、世界のどの民族にも当てはまる普遍的なものとしてゆくことが現代の課題となっています。ユダヤ民族が今シナイ半島でパレスチナ人に対して実行している「ホロコーストまがい」とも評価される武力の行使に対して、世界はなすすべを知りません。この映画を観て、そのことも気になりました。
【映画情報】
製作:2006年 ドイツ/オーストリア
監督:ステファン・ルツォヴィツキー
原題:DIE FALSCHER
原作:アドルフ・ブルガー 『ヒトラーの贋札 悪魔の工房』
時間:96分
出演:カール・マルコヴィクス/アウグスト・ディール/デーヴィト・シュトリーゾフ/ マリー・ボイマー/ドロレス・チャップリン
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