*

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(285) 映画『戦場のレクイエム』

公開日: : シネマDE憲法, 作品紹介, 戦争を考える

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(285)
映画『戦場のレクイエム』
(初出2009年1月26日掲載・蓼沼紘明 記)

戦場のレクイエム

激闘シーンを惜しみなく活写し戦争否定を明確に訴えていること、及び、現代の中国が「人間の尊厳」を基軸に据えて戦争と軍隊の非人間性を内部告発する映画を製作し大ヒットもさせたという2点において極めて注目される映画です。

実話に基づく物語です。貧しい家に生まれたグー・ズーティは、生後3か月の時両親が餓死しました。拾われたのが粟畑だったところからこの名前をつけられました。時は流れて1948年、新中国の建設をめぐって、毛沢東らが率いる共産党の人民解放軍と蒋介石を先頭とする国民党軍は激しく戦っていました。この国共内戦には3つの山場がありますが、最も熾烈だったのが、映画で採り上げられている准海戦役です。市街戦に勝利したものの、多数の部下を失った第9連隊長グー・ズーティ(チャン・ハンユー)は、直後、残った総勢47名の部下を率いて最前線の炭鉱を防衛するよう、師団長から命令されます。必死に戦いますが、国民党軍の圧倒的な兵力、装備の前に、次々と命を落としていく部下たち。第9連隊は全滅になりました。1人生き残ったグーは、激しい贖罪の念にかられます。やがて47名は「革命烈士」ではなく、失踪者扱いになっていることを知ります。グーは、仲間の名誉を取り戻すために、不自由な眼で1人黙々と埋められた戦場跡の炭鉱を掘り続けます。仲間を掘り出し、彼らが最後まで責任を果したことを証明するために。
やがて、意外なことが分ります。グーが所属する師団は、全体を安全に退却させるために、第9連隊を敵軍を引き付けておくための捨石にし、47名を炭鉱跡に埋めたまま新中国成立後も長年に渡って失踪者扱いにしていたのでした。

従来の中国の戦争映画は、政治宣伝が目的だったと監督は述べています。兵士はあくまで勇敢に戦った烈士でした。しかし、実際の兵士は生と死のはざ間でおののきながら死んでゆきました。この映画は、「敵」である国民党軍の兵士が倒れるシーンも同じ1人の人間の死としていたたまれない感じを伝えています。描いているのは、戦争の悲惨さであり、人間のいのちの大切さです。解放軍が敗北していくということ、及び解放軍幹部の保身のための不正を暴いている設定が大胆です。今の中国共産党の正当性は正義の戦争に勝ったことに大きく依拠しています。その中で中国では破格の17億円も投じてこの映画が製作され、そして上映史上2位という観客を集めたということに、日本国憲法9条の精神にも通じる、中国映画界の自由化を強く感じさせます。映画は韓国人スタッフの大きな協力によって出来上がりました。今後、映画の分野でも、日本も加わった3国の提携関係が進むとすれば、平和な東アジアの建設に向けて明るい展望が開かれるのではないか、そんな夢も抱かせてくれる作品だと思います。

【映画情報】
【製作】2007年 中国
【時間】124分
【原題】集結號(集合ラッパ)
【監督】フォン・シャオガン
【脚本】リウ・ホン
【出演】チャン・ハンユー/タン・チャオ/ユエン・ウェンカン/タン・ヤン/リアオ・ファン/ワン・バオチアン

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

関連記事

1937

南京1937

日中戦争下の南京で日本軍が行ったいわゆる“南京大虐殺”を描いた実録歴史ドラマ。監督は「太陽山

記事を読む

81-LgT15dhL._AC_UF8941000_QL80_

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (113) 『バルトの楽園』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (113) 『バルトの楽園』 (初出2006年7月10日掲

記事を読む

エネミー・オブ・アメリカ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (29) 『エネミー・オブ・アメリカ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (29) 『エネミー・オブ・アメリカ』 (初出2004年1

記事を読む

第9回むのたけじ反戦塾案内チラシ2024年8月17日オモテ

第9回むのたけじ反戦塾(2024年8月17日)

第9回むのたけじ反戦塾 日時:2024年8月17日(土)13:30〜17:00 会場:文京区民セ

記事を読む

145明日へのチケット

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (146) 『明日へのチケット』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (146) 『明日へのチケット』 (初出2006年11月2

記事を読む

第88回「豹変と沈黙」案内チラシ(2026年5月13日入稿時)オモテ

第88回 憲法を考える映画の会『豹変と沈黙』

第88回 憲法を考える映画の会『豹変と沈黙』 第88回憲法を考える映画の会 ■日時:

記事を読む

51yP3eYUFeL._AC_UF8941000_QL80_

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(267) 映画『石内尋常高等小學校 花は散れども』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(267) 映画『石内尋常高等小學校 花は散れども』 (初出

記事を読む

首相官邸の前で

首相官邸の前で

映画「首相官邸の前で」   『首相官邸の前で』は,2011年の福島原発事故以降、2

記事を読む

第41回「ザ・思いやりパート2」20180224

『ザ・思いやりパート2 希望と行動編』

『ザ・思いやりパート2 希望と行動編』   チラシpdf 「第41回憲法を考える映画の

記事を読む

真実のマレーネ・ディートリッヒ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (40) 『真実のマレーネ・ディートリッヒ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (40) 『真実のマレーネ・ディートリッヒ』 (初出200

記事を読む

ad

ad


第90回「新・戦場の兵士」案内チラシ(2026年10月18日)20260916入稿時原稿オモテ
第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』

第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』 第9

戦場のレクイエム
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(285) 映画『戦場のレクイエム』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(285) 映画『戦場のレクイエ

242チェ 38歳別れの手紙
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(284) 映画『チェ 39歳別れの手紙』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(284) 映画『チェ 39歳別

283蟹工船
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(283) 映画『蟹工船』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(283) 映画『蟹工船』 (

282映画『そして、私たちは愛に帰る』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(282) 映画『そして、私たちは愛に帰る』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(282) 映画『そして、私たち

『ガイサンシーとその姉妹たち』『melos』の上映、上演を広げる会
公演「remembrance記録と記憶 ―中国と日本の表現者による未来への祈りの試み―」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(281) 公演「remembr

→もっと見る

PAGE TOP ↑