憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (219) 映画『勇者たちの戦場』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (219)
映画『勇者たちの戦場』
(初出2008年1月21日掲載・蓼沼紘明さん記)
イラクにおける米軍の戦争と、帰還した米兵たちの心身の苦しみや葛藤を描写したドラマです。イラク帰還兵に広くリサーチを行い、実際に元兵士たちが体験したエピソードを元に作成されました。
米兵たちは、帰還して平穏な生活に戻ることを夢見て戦っていました。しかし、いざ還ってみると、そこには戦争のトラウマとの戦いという新たな「戦場」がありました。「イラク症候群」と呼ばれるものです。この瞬間も続いているイラク戦争の実相に接することができる大変貴重な映画です。
帰還を2週間後に控えたワシントン州の州兵たちからなるイラク駐屯部隊は、トラックを連ねて最後の輸送任務に就きます。しかし目的の町に到着した部隊は、住宅街の建物からの激しい奇襲攻撃に遭います。すさまじい戦闘シーン。若い兵士のトミーは相手を追跡攻撃する中で親友を失います。女性兵士ヴァネッサは爆弾で負傷し、軍医のウィルが応急手当にあたります。
生き残って家族の元に還った者たちですが、生々しい戦場の悪夢に悩まされます。「やるかやられるかどっちかだったんだ」と自分を納得させようとしますが、激しい罪悪感にさいなまれます。自分の手で人を殺し、目の前で仲間を殺された彼らでなければ分からない苦悶です。片手が義手になったヴァネッサは、愛娘を両手でしっかり抱きしめることもできません。病院に戻ったウィルは、戦場が脳裏から離れず、反戦を主張する息子を殴り酒におぼれます。以前の職場を失ったトニーは、片時も自分の腕の中で死んだ親友のことを忘れることができず、新しい仕事に就く気持になれません。戦争に行っている間に恋人に心変わりされた帰還兵は銃を持って立てこもります。
その後かれらはどんな道を歩んだでしょうか。戦争で一度失ってしまったものは戻りません。
戦争は人間を殺すものであり、兵士の人間性も破壊します。映画は、この側面をていねいに描くことによって戦争を告発しています。米兵を戦地に空輸している航空自衛隊を持つ日本にとっても、身近な問題です。
目をイラクに転じれば、イギリスの調査機関ORBによると、これまでのイラク人の犠牲者数は100万人以上にのぼる可能性があるそうです。イラクの人々による映画が制作されるようになるのはいつの日でしょうか。
【映画情報】
制作:2006年 アメリカ
監督:アーウィン・ウィンクラー
原題:HOME OF THE BRAVE
時間:107分
主な出演者:サミュエル・L・ジャクソン/ ジェシカ・ビール/カーティス・ジャクソン / ブライアン・プレスリー
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