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映画『人らしく生きよう─国労冬物語』

映画『人らしく生きよう─国労冬物語』

第57回「地の塩」「人らしく生きよう」20201103・23(10月10日入稿時)ウラ

 

【上映情報】

憲法を考える映画の会 特別上映会『人らしく生きよう─国労冬物語』

と き:2020年11月23日(月・休)13時30分〜16時30分
ところ:文京区民センター 3A会議室 (地下鉄・春日駅2分/後楽園駅5分)
プログラム:
13時30分〜15時10分 映画「人らしく生きよう ─国労冬物語」(100分)
15時30分〜16時30分 トークシェア
・『戦後史の中の国鉄闘争』著者:森健一さん
・制作者:松原明さん・佐々木有美さん
参加費:一般1000円 学生・若者500円

●コロナ感染予防にご協力ください(会場でのマスク・消毒)
 会場の席数が制限(95席)されています。
 参加希望の方は事前に下記連絡先にご連絡ください。
 感染状況の拡大などによって、中止、延期になる場合があります。

 憲法を考える映画の会
 TEL&FAX:042-406-0502  E-mail: hanasaki33@me.com

【映画情報】

映画
現代のリストラの原点である、国鉄分割・民営化の実態を15年にわたって描いたドキュメンタリー。
まさに現在の分断と断絶の社会が、中曽根政権の臨調路線によって始まったことが明らかになる。
分割民営化に反対する国労組合員には、ありとあらゆるイジメと差別が行われた。
そのあげく1000名近くの組合員が解雇された。
残った組合員にはJRで引き続く差別が待っていた。
解雇された人も、残った人もなぜ、彼らはこうした現状に耐えて国労組合員であることをやめないのか。
日本の戦後に脈打つ「労働者魂」をみることができる。
2001年制作 100分
制作:松原明 佐々木有美  配給:ビデオプレス

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【映画の感想】

映画『人らしく生きよう 国労冬物語』

2001年制作の「記録映画」です。しかし、今の私たちの社会を考える映画です。
まさに今、このような分断と断絶の社会になったのは、中曽根政権の臨調路線がもたらしたものと納得できました。

1980年から2000年代、同じ時代を生きて、この映画にあるような不当なことが起きていることを耳にしていたにもかかわらず、頭の片隅に追いやっていた自分が、「人」をないがしろにする、どうしようもない社会と政治を作り上げてきたと痛感しました。

【あらすじ】
1987年、国鉄は分割民営化されJRとなった。だがこれに猛反対した国労(国鉄労働組合)組合員は、その後、容赦ない首切りや組合差別の憂き目に遭わされることになる。
鶴見線の電車運転士だった佐久間忠夫さんは、分割民営化後に人材活用センターに配属、定年1年前に解雇された後は、復職を求める闘争団のひとりとして活動している。
新宿の保線の職場から外され、ホーム売店を盥回しにされた後、今は隔離職場に入れられている山田則雄さんもまた、組合差別の犠牲者だ。
大谷英貴さんは、国労を抜けなかった為にJR不採用になった元車輌検査係。現在は、北海道・留萌で一緒に解雇された仲間と、行商やバイトをしながら復職を求め闘争中。
藤保美年子さんは、JR不採用となった国労組合員の妻。組合員家族の代表として、夫の復職を訴え続けている。なんの保証もないまま、突然、人として生きる術を奪われた彼ら。
しかしそんな彼らの苦闘も空しく、2001年、労組幹部が政府の四党合意を承認してしまう。だが、14年に及ぶ闘いを無駄に出来ない彼らは、新たな組織を作り闘い続けている。(映画.com『人らしく生きよう』)

マスコミが描かなかったもうひとつのニッポン
「これは国鉄分割民営化のすさまじい攻撃の中でも自分の良心を裏切らずに生きた人々の物語。1986年から15年にわたって撮り続けた貴重な歴史的映像。ふりかえれば、日本の大失業時代・リストラの嵐はまさにここから始まっていた。今あらためて問う 人間らしく生きるとは?
日本の戦後民主主義の分かれ道のひとつが国鉄問題だった。国労の命運・つぶされ方・弾圧の受け方がこの作品からはっきりと見えてくる。マスコミが無視しつづけた戦後の大問題をこれを見て考えてほしい」土本典昭(記録映画作家)

映画は、1987年に始まる国鉄の分割民営化の過程で解雇された国労組合員の「闘争団」の15年にわたる闘いを撮っていた映像をまとめたものです。闘いの現場に密着して撮り続け、その都度公開してきた十数本の記録映像を総集編としてこの作品と言います。

闘争そのものの歩みと共に、不当に切り捨てられ、苦しんで、苦しんで、それでもあきらめなかった人々の生活、その時その時の思いと言葉を撚り合わせるように描いていったものです。

そうした歴史と、思いが積み上がっていって、最後の7.1臨時大会、壇上に駆け上がった藤保美年子さんへの演説への突っ走っていくことになるのでしょう。まさに抑え込まれていた思いがはじけるようなクライマックスです。

映画を見てまず私が感じたことは、中曽根政権がマスコミを利用していかに「分割民営化」を行っていったかです。

「メザシの土光」(行政改革の中心人物が質素・倹約の人であるイメージを植え付けた)に始まり、「国鉄労働組合員は権利ばかり主張して働いていない」といった根拠のない誹謗によって組合潰しの風潮をつくるイメージ操作が政権とメディアによって行われます。そして「分割・民営化」こそが、正義であるかのような誘導が成されていきます。そうした巧妙な宣伝に私たちも乗ってしまっていたのではないか、思うのです。

組合活動そのものを、何だか貧しく、格好の悪いもの、時代遅れ、と言ったイメージと印象で見ていたのではないか、それが組合の組織率の低下や弱体化につながっていったのではないか。

中曽根首相は「国労・総評をつぶして改憲の道を開く」と誇らしげに語っていたそうです。そうしたイメージ戦略による意識操作は、これが成功事例として小泉政権や安倍政権に受け継がれていったことをまざまざと感じます。

働くものたちの生存をかけた闘いと結束が、政治と社会の両方から壊されていった時代です。力を合わせることの意味が失われ、基本的人権がないがしろにされ、「人らしく生きられない」弱いものが捨てられることに何の関心も抱かない社会になっていきました。
もう一度労働運動や、生活を基本から支える組合活動、力を合わせて闘う活動の意味,その根本にあるものを知って、市民の運動の中に見直し、活かして行くことができないかと、映画を見て思いました。

それは、この社会の目に見えないところで起きている,あるいは覆い隠されているさまざまな問題を見つめ直し、自分たちのものとして捉え直していく、そしてその問題をより多くの人と共有、協働し、力にしていくことでしょうか。 今、非正規雇用労働者や外国人労働者の問題など、働く場における人々の分断が問題になっています。弱い立場のものの孤立無援の闘いを、他人ごとにせず、自分たちに関わる問題と認識して行くためにもこの映画は今なお、役立つと思います。そう思わせるものがこの映画にあります。

「私たちが、かくも長く国鉄闘争(の映画の制作に)関わって来たのは、誰に強制されたわけでもない。国鉄闘争の主体、国労組合員の生き方に深く共鳴したからだ。(中略)そこで「人らしく」という歌を聴いた。その一節に「闘う人ほど人らしく生きれることを知っていますか」という歌詞があった。私たちが国労に感じていた『なぜ』の答えがここにあった」(制作者:佐々木有美さん)

【制作スタッフ】

うた:田中哲朗
音楽:村山エイジ
紙朗読:池田武志
CG:デザイン室レフ
編集:エム・ケー企画
協力:国労教宣室 国労闘争団全国連絡会議 映像文化協会
小林アツシ 志水とほる 新田進 岡田尚
撮影・取材・構成:松原明 佐々木有美
企画制作:ビデオプレス
2001年製作/100分/日本
公式サイト:http://vpress.la.coocan.jp/hito.html
予告編:https://www.youtube.com/watch?time_continue=94&v=-FdFEYdz7sk&feature=emb_logo

(法学館憲法研究所ホームページコラム 映画『人らしく生きよう─国鉄冬物語』

http://jicl.jp/cinema/backnumber/20201005.html より

 

 

 

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