憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (199) 映画『Life 天国で君に逢えたら』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (199)
映画『Life 天国で君に逢えたら』
(初出2007年9月24日掲載・H.T.さん記)
“死期を前にしたこの38歳のガン患者の、家族を包み込むような微笑みと明るさは何なのか”。“本当に「死」を見つめた人にしか見えないものって何なのだろう”。
04年12月、たまたま合わせたテレビの「ザ・ノンフィクション」に釘付けになりました。日本人でただ1人、8年間ワールドカップに出場し続け、優勝もしたプロウインドサーファー飯島夏樹さんの生き様(死に様?)を追ったこの番組初の2時間ものでした。夫婦・家族、そして友人たちのありきたりでない強い愛と絆を綴った物語が映画になりました。
ウインドサーフィンは、風向き次第で試合の流れが一変する過酷なスポーツです。自然の変化に身をゆだねながらも、“ゴールするまで決して諦めない”のが夏樹さん(大沢たかお)の信条です。日本では敵なしの夏樹さんは、賞金も多い国内大会よりも、世界に挑戦していました。しかし、全く勝てず。愛妻寛子さん(伊東美咲)と結婚式を挙げたり身体を造る肉を買ったりするお金もありません。寛子さんは夏樹さんのためにだけ2個の目玉焼きを作ります。やがてそんな挑戦者魂がやがて実を結び、海外の海辺に大きな家を買うこともでき、4人の子どもにも恵まれます。でもバラ色だけではなく、ありのままの生活の様子を見せ、生きること、働くことの厳しさもきちんと描いています。世界中を遠征して飛び回り、ほとんど家にいない夏樹さんに、子どもたち(長女の小夏さん)は反発します。
そして、思いもかけない肝細胞癌の宣告。人一倍強靭な心身の崩壊への回路。日本に帰り、17回の入退院を繰り返し、1年間に2度の大手術をします。寛子さんは、医者から余命3か月だと告げられますが‥‥。夏樹さんは、死の恐怖からパニック障害とうつ病になり、暴れます。おののく寛子さんと子どもたち。当たり前の人間の持つ弱さもありのままです。
そんな夏樹さんを変えるきっかけになったのは、「勝てるようになるまでやる」と、内緒でウインドサーフィンの練習に苦闘する13歳の小夏さんの姿でした。そして寛子さんの懸命な愛、夫妻を支えるサーフィンの仲間たち(真矢みき等)、全国のファンからの応援メッセージの山。
「どうせ冬が越せないなら、冬のない所に行こう」。海に臨むハワイの在宅ホスピスに移った一家。そこには、海の素晴らしさ、ガンの治療で出会った人たちのこと、赤裸々な自分をさらけだすこと、家族や仲間たちへの思い等々を3冊の小説に著すために1分1秒を惜しむストイックな夏樹さんの姿がありました。
波の間に揺れる人生の風向きは急に変わることがあります。しかもゴールがすぐそこに見えている。しかし、夏樹さんは波や風に身を委ねながらも“ゴールするまで諦めない”を実践しました。それは“(ガンに)生かされている”“今が楽しい”という生き方を諦めないことでした。「天国に行ってもこの手を離さない」という寛子さんがいたから可能だったのでしょう。
今、寛子さんは、「この本が支えで、主人が亡くなってからも生きていけます。」と言われています。
寛子:この解説って、「憲法」なの?
夏樹:第○条が出てくる話じゃないね。でも、「憲法」がある以前にまず私たち家族同士、市民同士の私的規範、社会規範があって、そのうち国家にこれだけは止めて欲しい、やって欲しいという法規範を要求するのが憲法だよね。その意味ではそもそも憲法以前にあるべきとても大事なことだよ。
寛子:あなたは言わなかったけど、私たちの生活のことを考えてくれたのね。
夏樹:もちろん。せめてできることは小説を書き、映画化してもらえることだからね。それにしても、子どもを抱えた寡婦にこの国の社会や福祉は冷たいね。だからその分、がんばっちゃったんだ。
寛子:あれ、憲法の話になっちゃったわね。セリフでは「子どもは若いうちから苦労させた方がいいの」って言ったけど。
(この部分はフィクションです)
【映画情報】
製作:2007年 日本
監督・新城毅彦
時間:118分
原作:飯島夏樹「天国で君に逢えたら」「ガンに生かされて」
出演:大沢たかお/伊東美咲/真矢みき/袴田吉彦/哀川翔
主題歌:桑田佳祐「風の詩を聴かせて」
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