*

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (200) 映画『ミリキタニの猫』

公開日: : シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (200)
映画『ミリキタニの猫』
(初出2007年10月1日掲載・H.T.さん記)

ミリキタニの猫  ミリキタニの猫2

「戦争ではなくアートを創りだす」をモットーに、「心臓が止まるまで絵を描き続ける」という、不屈で天衣無縫な1920年生まれの日系アメリカ人画家ジミー・ツトム・ミリキタニ(三力谷)を追ったドキュメンタリーです。

2001年9月11日、世界トレードセンターが崩壊し騒然としたニューヨークの路上で、ミリキタニ氏は、いつもと同じように平然と絵を描いていました。特別なことはなにも起きてないよ、というふうに。彼にとって、それはいつもの風景だったのです。

カリフォルニアに生まれたミリキタニは、母の故郷である広島で教育を受けます。しかし、兵学校への入学を拒否し、「自由の国」で絵画を通じて日米の掛け橋になろうと夢を抱き、アメリカに帰国します。そこに勃発した第二次世界大戦。彼は日系人強制収容所に送られ、アメリカに抗議して市民権を捨てました。戦争が終わりほっとしたのもつかの間、アメリカ政府は農場での強制労働を命じます。生活、財産、画家としての未来を失い、故郷の広島では原爆で多くの家族や友人たちが犠牲になっていました。
以来、差別的なアメリカやアメリカ人たちに反抗する反骨の人生が始まりました。色鉛筆やクレヨンなどで描いた絵を売りながら細々とホームレスの生活を続けます。

そして2001年。 彼の絵を買おうとした若い女性監督リンダ・ハッテンドーフは、絵の代金の代わりに自分を撮影してくれと頼まれ、彼の数奇な人生に関心を持ち始めます。9、11で行き場を失った彼を、リンダは自分のアパートに引き取ります。傍若無人とも言える彼を暖かく世話するリンダ。リンダはこの時のことを、「9,11以降全てが変わりました。戦争、恐怖、憎悪が蔓延する中で、私は何かポジティブなことをしたいと思いました」「彼の失った60年間分の信頼を修復したかったのです」。映画の監督が、いつの間にか映画の登場人物になります。
彼の絵の価値を認め、創作活動を支える親切な人たちに接して、やがて、彼の心は開き笑顔を取り戻してゆきます。

アメリカでの差別や広島の街の破壊への怒りを描く絵は才気に走り、たぎる思いをたくましい筆致で語っています。題名は、彼が猫の絵が好きだったこともありますが、強制収容所で獄死した少年に、生前猫の絵を描くことをせがまれたことも大いに影響しています。

理不尽な時代の波の中で少数派を誠実に見つめる不屈の精神に満ちた一人の画家の孤独と、晩年の彼をとりまく人々の暖かさの両面を描いたヒューマンな作品です。感動的なラストシーンが待っています。

【映画情報】
製作:2006年 アメリカ
原題:THE CATS OF MIRIKITANI
監督: リンダ・ハッテンドーフ
時間:74分
出演もしくは声の出演 ジミー・ツトム・ミリキタニ/ ジャニス・ミリキタニ /ロジャー・シモムラ

 

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

関連記事

第53回「ニジノキセキ」20191026コピー3

映画「ニジノキセキ─「4.24」の未来へ、七色の架け橋─」

映画「ニジノキセキ─「4.24」の未来へ、七色の架け橋─」 第53回憲法を考える映画の

記事を読む

シリーズ戦争と女性

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (246) 「シリーズ戦争と女性」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (246) 「シリーズ戦争と女性」 (初出2008年6月9

記事を読む

0529110940_66568e6485dc4

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (103) 『憲法-今と未来の世代のために-』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (103) 『憲法-今と未来の世代のために-』 (初出20

記事を読む

第45回「スペシャリスト」20180923(電子メール発信用)

映画『スペシャリスト〜自覚なき殺戮者〜』

映画『スペシャリスト〜自覚なき殺戮者〜』 【上映案内】 第45回憲法を考える映画の会

記事を読む

266トウキョウソナタ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(266) 映画『トウキョウソナタ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(266) 映画『トウキョウソナタ』 (初出2008年10月

記事を読む

kato

加藤周一さん九条を語る

評論家として生き、運動に直接かかわることのなかった加藤さんが、自ら呼びかけ人となって実践にの

記事を読む

30ad1a01d224f4a5

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (218) 映画『北辰斜にさすところ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (218) 映画『北辰斜にさすところ』 (初出2008年1

記事を読む

71zAnVKvJVL

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (223) 映画『ヒトラーの贋札』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (223) 映画『ヒトラーの贋札』 (初出2008年2月1

記事を読む

第70回「石垣島ドキュメント」「沖縄再び戦場へ」 (2023年7月16日)2オモテ

第70回憲法を考える映画の会『ドキュメント石垣島 2023年3月陸自ミサイル基地開設の瞬間』『『沖縄、再び戦場〔いくさば〕へ』(仮)スピンオフ作品上映』

第70回憲法を考える映画の会 『ドキュメント石垣島 2023年3月陸自ミサイル基地開設の瞬間』

記事を読む

第49回「天から落ちてきた男」190302入稿用

映画「天から落ちてきた男」

映画「天から落ちてきた男」 【上映情報】 第49回憲法を考える映画の会 日 時:2019年

記事を読む

ad

ad


第90回「新・戦場の兵士」案内チラシ(2026年10月18日)20260916入稿時原稿オモテ
第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』

第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』 第9

imgrc0108397285
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(293) 映画『12人の怒れる男』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(293) 映画『12人の怒れる

s1108713244.1
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(292) 映画『松川事件』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(292) 映画『松川事件』

291チェンジリング
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(291) 映画『チェンジリング』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(291) 映画『チェンジリング

290おくりびと
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(290) 映画『おくりびと』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(290) 映画『おくりびと』

289映画『彼女の名はサビーヌ』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(289) 映画『彼女の名はサビーヌ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(289) 映画『彼女の名はサビ

→もっと見る

PAGE TOP ↑