憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (160) 『あなたを忘れない』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (160)
『あなたを忘れない』
(初出2007年2月12日掲載・H.Tさん)
2001年1月26日、JR新大久保駅のホームから酒に酔った50歳代の男性が線路に転落しました。
韓国から日本語学校に留学生として来ていた李秀賢(イ・スヒョンさん(当時26歳)とカメラマンの関根史郎さん(当時47歳)は、男性を助けようと、とっさに線路に飛び降り、走ってきた電車に3人ともはねられて亡くなりました。
李秀賢さんは、この日は、アルバイト先から帰る途中でした。
二人の行動には人々が目を見張り、全国を衝撃的な感動の渦に巻き込みました。
「『彼ならやるかな』。その1人、カメラマン、関根史郎さんの知人が語っていた。『生きるのが下手だった。何でも一生懸命だった』とも言った。もう1人、韓国からの留学生、李秀賢(イスヒョン)さんの友人は『弱い人を見ると放っておけない、彼らしい行動だった』と、しのんだ」(01年1月28日付朝日新聞「天声人語」より)。
映画は、この事件を題材に脚色したものです。スポーツとロックバンドを愛するイ・スヒョンと、音楽を愛する少女、星野ユリは、友情を育み、やがて愛し合います。そんな青春の真っ只中のある日、事件が起こります。
私たちは、新大久保駅事件の何に感動したのでしょうか。李さんたちが死をもって教えてくれたことは何だったでしょうか。映画は、改めて、このことを提起しています。
それは、純粋で崇高な行動には、国境がないということでしょう。わたしたちは、「尊厳ある存在としての人間」に感銘を受け、そして、学ぶという経験をしたのでした。
しかし、この経験を生かしたでしょうか。逆に、近年、日本と韓国をはじめ近隣諸国の人々との関係を、国というフィルターを介して見る傾向が強まってはいないでしょうか。ナショナリズムの壁を破り、人と人の相互理解を構築し深めてこそ、真の友好関係が作れるのではないでしょうか。このことが、国家を動かす確かな力になると思われます。
もう一つ。二人の「自己犠牲」を、「国家のための犠牲」の精神を復活させるために利用する強力な動きがあります。事件当時から、戦前に通じる国家への奉仕の精神の復活のための教育改革に直結させて論陣を張る全国紙もありました。そして、07年1月24日に発表された政府の教育再生会議第一次報告(PDF)では、高校の「奉仕活動」の必修化が謳われました。国家という抽象的なもののために個人が犠牲にされることにないよう、充分な警戒が必要です。
【映画情報】
制作:2006年 日本/韓国
監督:花堂純次
原作:辛潤賛著「息子よ!日韓に架ける命のかけ橋/康煕奉著「あなたを忘れない」/佐桑徹著「李秀賢さん あなたの勇気を忘れない」
時間:130分
主な出演者:李太成 (イ・テソン)/ マーキー/ 竹中直人/ 金子貴俊 /浜口順子/原日出子/ジョン・ドンファン
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