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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (113) 『バルトの楽園』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (113)
『バルトの楽園』
(初出2006年7月10日掲載・H.T.さん/H.O.さん記)
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今回はこの映画についての2人のコメントを紹介します。

<H・T>

第一次世界大戦における帝国主義国同士の戦争にまつわる話ですが、人間賛歌の友情物語であり、
敵国人の人権を敵視し虐待や暴力が当たり前となっている最近の戦争に、強い警笛を鳴らす映画です。

1914年、日本軍は3万人の大軍を送り込み、敵国ドイツの中国にある植民地青島(チンタオ)を攻略し、
ドイツ兵4700人を捕虜にしました。
彼らは日本各地にある俘虜収容所に振り分けられ、環境が劣悪な久留米の収容所で過酷な2年の時を過ごします。
1917年、捕虜達は徳島県鳴門市にある板東俘虜収容所に移送されました。

板東の収容所の松江所長(松平健)は、朝敵とされた会津藩士の家に生まれた人で、捕虜に対する差別を許せませんでした。
硬く心を閉ざしていた捕虜達は、所員や地元民の暖かい心にほだされ、徐々に心を開いていきます。
パンを焼くことも、新聞を印刷することも、楽器を演奏することも、そしてビールを飲むことも許されます。
当然死も予想した捕虜たちですが、生きる喜びさえ見出してゆきます。
しかし、松江所長の扱いは軍上層部に糾弾され、陸軍省からは予算削減の通達を受けます……。

やがて1918年11月、休戦条約が締結され、捕虜の精神的支柱だったハインリッヒ少将は、拳銃自殺を図ります。
ハインリッヒに、『捕虜たちの誇りであり、心の支えとして生きて欲しい』と懇願する松江。

開放され、自国に戻る事を許されたドイツ人達は、松江所長や地元民に対する感謝の思いを込めて
『交響曲第九番 歓喜の歌』を演奏します。
今では有名な曲ですが、この時日本で初めて演奏されました。
映画は、文化の異なる国民が収容所生活という特殊な環境で、どのように交流していったのか?
そして現代に何を残したのか?と問いかけながら、地域住民との友好と、軍人でありながら、
生きる自由と平等の信念を貫き通した所長・松江を始めとした所員達のヒューマニズムを描いています。
所長・松江という人物像を造ったのは、朝敵として青森県への移住を命じられ、
苛酷な環境の中、飢えと寒さで病死したたくさんの会津の人たちであることにも思い巡らすと、
深い背景を持っている映画だと思います。
(2006年7月10日)

<H・O>

1914年、中国・青島に進出していたドイツ軍を日本軍が攻略した。
ドイツ兵4700人は捕虜として日本各地の施設に収容された。
坂東俘虜収容所は他の収容所と異なり、捕虜たちに対して寛容な態度で接した。
松江豊寿所長の考えからだった。やがて第一次世界大戦が終わり、
捕虜たちは帰国するに際して、ベートーベン作曲の『交響曲第九番 歓喜の歌』の演奏会を開いた。
松江所長や地元民への感謝の思いを示したのである。
『交響曲第九番 歓喜の歌』が日本で初めて演奏されたのはこの時だった。
このようなストーリーの映画です。

全体的に松江所長の人間性の素晴らしさが描かれています。
戦争では敵国とその兵士によって多くの日本人も犠牲になり、彼らに対する憎しみが広がるでしょう。
そんな中で敵国の捕虜に対して、その人間としての権利を保障したのですから松江所長の態度は感動を呼んだのです。

今日日本社会では、他国との緊張関係が説かれ、
軍事的な備えと国民が愛国心を持つことの必要性が強調されるようになってきています。
この映画を通して、他国の人々のことを思いやり、交流を深めることこそ重要なのだということが広がって欲しいものです。
それは日本国憲法の精神でもあります。
率直な感想としては、戦争状態の時の人々の敵国に対する憎悪はもっと激しいものだったのではないかと思います。
戦争の悲惨さ・恐ろしさ・愚かさをよりリアルに描くことによって松江所長の功績もより浮き彫りになるように思いましたが、
そんなことも多くの方々と語り合っていきたいものです。
(2006年7月10日)

【映画情報】
制作:2006年 日本
監督:出目昌伸(代表作「きけ、わだつみの声 Last Friends」「収容所から来た遺書」
主な出演者:松平健/ブルーノ・ガンツ/大杉漣/市原悦子/高島礼子/泉谷しげる

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