憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (177) 映画『ドレスデン、運命の日』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (177)
映画『ドレスデン、運命の日』
(初出2007年4月30日掲載・H.T.さん記)
第2次大戦で悲劇に巻き込まれたのは、ドイツの庶民とて例外ではありませんでしたが、加害国だったドイツは、自らの被害の事実については多くを語ってきませんでした。しかし、最近、長い沈黙が破られ、ドイツの庶民の悲惨な経験が明らかにされつつあります。このことは、加害者としてのドイツが周辺諸国に対して精力的に謝罪や償いを進めてきた結果として、可能になったようです(被害を中心に語り、加害の事実に今なおきちんと向き合わない日本とは対照的です)。この映画は、ドイツ東部の大都市、ドレスデンの大空襲の史実を、戦後60年を経て初めて正面から映像化したものです。ドイツ人にとっては、日本でいえば広島、長崎にも匹敵する忘れ得ない痛切な悲劇です。
1945年2月。“エルベのフィレンツェ”と讃えられ、ドイツ一とも言われる文化と芸術を誇る美しい街ドレスデンのある病院。理想に燃える献身的な看護婦アンナは、同僚の医師アレクサンダーからプロポーズを受け幸せに働いていました。しかし、間もなく、ドイツ軍に撃墜され、怪我をして病院の薄暗い地下に身を潜めていた英軍パイロットのロバートを見つけ、傷の手当をし始めてから、運命は彼女の人生を劇的に変えていきます。アレクサンダーの保身的な面などに気付いてしまったアンナは、敵中にありながら大胆かつ包容力あるロバートに次第に惹かれていきます。
そんな中、2月13日から14日にかけ、イギリスを中心とする連合軍は突如、激しい無差別空爆をドレスデンに浴びせ、一夜にして街の85パーセントを破壊します。空爆シーンのリアルさは壮絶です。燃え上がる炎が周囲の空気とともに人間たちを引きずり込んでいきます。アンナは爆弾の雨の中を必死で逃げまどいます。絶対に生き抜くという強い意思を持って‥‥。
ドレスデンの悲劇は、航空機による爆撃が主力になった、第1次戦後に現れた無差別爆撃の思想にもとづくものです。無差別爆撃は、空爆によって都市を破壊し一般市民を殺戮して、敵国民の抗戦意思をそぐことを主たる目的とした戦略爆撃の代表的なものです。初期のものとして、ピカソの絵で知られるゲルニカ、次いで1938年から日本軍が始めた中国の重慶攻撃が有名です。ドレスデンや日本各地の都市の空襲と続いて、最後は広島、長崎への原爆投下でした。
無差別爆撃ないし無差別攻撃の例は、第2次大戦後も、米軍によるベトナムやイラクに対する攻撃にも見られます。人道に対する罪であり、戦争犯罪とされている無差別爆撃のすさまじさを肌で感じるとともに、真剣な愛に国境はないことを教えられる映画です。
法学館憲法研究所では、浦部法穂主席客員研究員(名古屋大学教授)が、「世界史の中での憲法」について連続講座(ライブ、オンライン)を開設しています。5月19日(土)は、いよいよ第5回「戦争と平和の歴史」です。戦争と平和の問題を広い視点で捉える絶好な機会となるでしょう。
【映画情報】
製作:2006年 ドイツ
監督:ローランド・ズゾ・リヒター
原題 :DRESDEN
時間:150分
出演:フェリシタス・ヴォール/ジョン・ライト/ベンヤミン・サドラー/ハイナー・ラウターバッハ
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