憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (161) 『墨攻』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (161)
『墨攻』
(初出2007年2月19日掲載・H.Tさん)
中国が群雄割拠の戦国時代だった紀元前370年頃の物語です。10万人の趙軍は、住民4000人の粱城を攻撃しようとしていました。粱の王は降伏を決断します。そこに、思想家集団・墨家に属する人物、革離(かくり)が1人でやってきます。
墨家は墨子を祖とし、その思想の一つは、「全ての人に平等な愛を」という「兼愛」の思想です。「天下の利益」は平等思想から生まれ、「天下の損害」は差別から起こるという、戦国時代にあっては特異な考え方でした。もう一つは、非戦論ともいわれる「非攻」です。「人一人を殺せば死刑なのに、なぜ百万人を殺した将軍が勲章をもらうのか!」という考え方で、大国が小国を攻める事に反対していました。両者とも、日本国憲法の人間の尊重、平等主義、平和主義に通じる、極めて先駆的な思想でした。
革離は、兵に関する全権を粱王から与えられ、スパイをあぶり出し、攻撃を事前に察知して作戦を練り、意表をつく戦いを展開します。
しかし、「非攻」の考えに基づいて城を守ろうとすれば、攻め込む敵を殺し、「兼愛」から遠ざかる、というジレンマに陥ります。現代でいえば、「専守防衛」であってもおびただしい敵を殺さなければならないという苦悩です。
当時の中国にあっては(否、つい最近までの人類の歴史では)、墨家は精一杯の平和主義の思想だったともいえるでしょう。現代の日本に生きる私たちは、敵を作らず、戦争を回避するための多くの平和的な手段を持っています。そして、その手段は現実に行使することが可能です。9条の思想を強力に実行し、広めることがいかに大切かを、映画は教えてくれます。革離の苦悩を生かすことにこそ、人類の進歩があるのではないでしょうか。
【映画情報】
制作:2006年 中国/日本/香港/韓国
監督:ジェィコブ・チャン
原作:森秀樹/酒見賢一 /久保田千太郎
時間:133分
出演もしくは声の出演:アンディ・ラウ/アン・ソンギ/ワン・チーウェン/ファン・ビンビン/ウー・チーロン
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