憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (143) 『シリアナ』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (143)
『シリアナ』
(初出2006年11月20日掲載・H.T.さん記)
新聞やテレビを眺めているだけでは分からない中東情勢の、全体像を想像できる臨場感溢れる映画です。
それは、CIA(アメリカ中央情報局)の元工作員であるロバート・ベアによる告発本『CIAは何をしていた?』を原作としているからでしょうか。
石油をめぐる多国籍企業やアメリカの利権のために、あるベテランCIA工作員が暗躍する姿を描いたフィクションですが、現実の素材を入念に調査して制作されたようです。
主な舞台は、中東のある産油国で米軍1万人が駐留する王国とワシントンです。
王国では、議会の開設など民主化を目指す兄の王子と、親米派の弟の王子が王位継承をめぐって対立しています。
兄王子は言います。
「私は石油開発を提携する国として中国を選んだ。
するとテロリストと呼ばれた」。
ドラマは、CIAのベテラン工作員ボブ・バーンズが「テロ支援者」兄王子の暗殺を命じられることを軸に展開します。
この話に、兄王子の構想に共鳴し相談役になる若きエネルギー・アナリストや、米国系石油企業の合併相手の不正を見つけ出して合併を有利に進めようとする野心家の弁護士の動きがからみます。
パキスタンからの出稼ぎ労働者で米国系石油企業から突然解雇され、母親と一緒に暮らす夢もなくした若者はイスラム過激派につながっていき…。
結末は、悲劇的であるがゆえに現実的だと思います。
工作員ボブ・バーンズも国策遂行のための1個の駒に過ぎなかったのでした。
どこかパキスタンの労働者と似ていることを感じさせます。
原作者ロバート・ベアは、このことを身体で知ったゆえに、書物を著したのかもしれません。
「シリアナ」とは、CIAの周辺で「アメリカの利益にかなう中東の新しい国」という意味で使われる業界用語だそうです。
快適な空間にいて歴史を動かし贅沢三昧にふける人々の姿と、歴史に動かされ翻弄される無数の人々の群はあまりにも対照的であり、二つの世界は敵対的です。
なお、CIAは、アメリカの大統領に直属して、その国策遂行のために、情報収集やテロを含む対外工作を行う機関です。
国家が使用する暴力には、「対テロ」を含む表の「戦争」と、裏の「テロ工作」があります。
後者も必要な国家機能(「国家テロ」)として認知し、予算をつけている民主主義国家は他にもあります。
【映画情報】
制作:2004年 アメリカ
監督:スティーブン・ギャガン
原題:SYRIANA
原作:ロバート・ベア
時間:128分
主な出演者:ジョージ・クルーニー/マット・デイモン/ジェフリー・ライト
DVD:3.980円
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