憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (32) 『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (32)
『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』
(初出2004年11月22日掲載 H.T.さん記)
1960年代のパリの裏町にはさまざまな少数民族が住み、売春婦の「花たち」が路上に立っている。
そんな裏町では普通かもしれない複雑な家庭に育った13歳の貧しい少年モモはユダヤ人(ユダヤ教徒)。
モモは向かいで小さな食料品店を営む年老いた孤独なトルコ人でイスラム教徒のイブラヒムの店で万引きを繰り返す。
しかしイブラヒムは、そんなモモを黙って見守る。やがて2人は一緒にイブラヒムの故郷であるトルコへと旅立つ。‥‥
愛も知らずに人生の春を迎えた少年が、人生の晩秋にさしかかった老人と出逢い、人生の楽しみ・喜びを知っていく過程を捉えている。
ともすれば人種や宗教の対立が煽られ、世代間の断絶も大きくなっているといわれる今、それらの違いを乗り越え、認め、理解し合い、2人は絆を結んでいく。
イブラヒムおじさんは言う。
「笑ってごらん。幸せだから笑うんじゃなくて、笑うところに幸せがくるんだよ」
「たとえ君の気持ちが届かなくても、彼女を愛した気持ちは君のものだ」
「宗教は考え方の1つでしかない」
そして歌が流れる。「なんで戦争するのよ。肌の色が違ったってどうでもいい。一緒に生きていこうよ」
声高でなくいつの間にか包み込んでくる感じの映画である。
『アラビアのロレンス』(’62)でペドウィン族の族長役を演じたオマー・シャリフの精悍な演技が眼に焼きついている方も多いだろう。
賢明でつつましく、おおらかなイブラヒムおじさん役のシャリフを味わうのも、一つの楽しみ方であろう。
【原題】MONSIEUR IBRAHIM ET LES FLEURS DU CORAN
【制作】2003年 フランス
【時間】95分
【監督】フランソワ・デュペイロン
【原作】エリック・エマニュエル・シュミット
【出演】オマー・シャリフ ピエール・ブーランジェ
ad
関連記事
-
-
第71回 憲法を考える映画の会「広島・長崎における原子爆弾の影響」
第71回 憲法を考える映画の会「広島・長崎における原子爆弾の影響」 第71回憲法を考える
-
-
沖縄ニューズリール『速報 辺野古のたたかい』のご案内
映画「沖縄ニューズリールNo.6『速報 辺野古のたたかい』2014年7月」のご案内 13日朝、
-
-
ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を
ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を そのジェット機は炎上しながら学校に墜ちた…。 実際の事件
-
-
証言 20世紀からの遺言 若者が問う侵略戦争
日本の敗戦から半世紀の時が流れ、悲惨な戦争体験を直接聞く機会は失われつつある。「戦争体験をた
-
-
映画「さとにきたらええやん」
映画「さとにきたらええやん」 2015年/日本/100分 重江良樹監督 【映画
-
-
井上ひさしさん九条を語る
世界は九条の世界を実現しようとしている 2010年4月9日に亡くな
-
-
憲法って、なあに? 憲法改正ってどういうこと?
憲法の伝道師伊藤真弁護士語りおろしDVD 改憲を阻止するようにあらゆる事をしなくてはな
-
-
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (31) 『PHILADELPHIA(フィラデルフィア)』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (31) 『PHILADELPHIA(フィラデルフィア)』