第76回憲法を考える映画の会『アトミック・カフェ』
第76回憲法を考える映画の会『アトミック・カフェ』
第76回憲法を考える映画の会
日時:2024年6月29日(土)13:30〜16:30
会場:文京区民センター3A会議室(地下鉄春日駅 2分・後楽園駅 5分)
映画『アトミック・カフェ』+トークシェア
プログラム
13:30〜13:40 この映画の背景について
13:45〜15:15 映画『アトミック・カフェ』上映
15:25〜16:30 トークシェア
参加費:一般 1000円 学生・若者 無料
(当日、会場でお支払いください。予約不要でどなたでも参加できます)
『アトミック・カフェ』放射能バッチを付け、爆心地へ送り込まれるアメリカ兵たち。まるで実験動物のような彼らに対して上官は“爆風や熱に比べれば放射能に心配はない”と告げる。かわいいカメのバート君が登場する教育アニメーションでは、原子爆弾が爆発したときの対処法を子どもたちに分かりやすく説明してくれる。バート君曰く“ピカッと光ったら、すぐに頭を隠すこと…。” 本作はこうした原爆に対する啓蒙を目的にしたフィルム素材だけを用い、ナレーションを排して巧みな編集でつないだ映像のみで、大衆プロパガンダの恐怖を浮かび上がらせていく。米ソの原爆製造競争が激しかった当時、アメリカ政府は国民を安心させるために原爆PR用フィルムを製作した。原爆がいかに安全であるか、害のないものであるかをまじめに説いたこの映画は政府や軍部が国民に歴史上に残る嘘をついたことを実証するものであった 。(1982年制作/89分/ケビン・ラファティ ジェーン・ローダー ビア—ズ・ラファティ監督作品/アメリカ映画/ドキュメンタリー
【今回の映画を見て考えていきたいこと】
今回の映画を見て考えていきたいこと
この映画は、原爆開発を描く映画というより、原爆への啓蒙を目的とした映画を材料に、政府、軍のプロパガンダについて考えていく映画です。原爆開発当時、政府や軍がどのように意図的に、原爆の被害を軽く印象づけたいとするプロパガンダをまき散らしていたかが浮かび上がってきます。それは何を意図したものなのか?
その情報は、軍や政治が都合よく、(都合の悪いものは隠して)科学的な根拠も何もなく、国民の安全や健康など二の次で核開発競争を第一に動いていたかがよくわかります。国家や軍は国民の生命を守らない、政権を守るためには平気で国民の生命をも犠牲にすると言うことがわかります。
しかし、この事実は70年前のアメリカの姿を笑う材料だけではなく、今でも、わが国では、同じようなおかしい、愚かしい政策が大まじめに進められています。そのことを知ると、慄然とします。
北朝鮮の弾道ミサイルの飛来への「注意」を呼びかけるJアラート。ミサイル基地の理由付けのように沖縄でも行われた市民、学校の避難訓練。東京、埼玉の、全国の学校や街角で繰り広げられました。今の日本ではマスメディアも、例えば「Jアラート」が発せられると、全局通常放送を止めて、その報道に従わなければならないと言うことを強要されています。
いつの間にそんな決まりができたのか、まさに改憲の眼目である「緊急事態条項」を先取りし、どんなことでも有無を言わさず従わせる権力をやりたい放題、都合の良い意識の浸透、洗脳に努めているかのようです。
この映画を見て、戦争への道を政治が突き進もうとしている今、戦争の危機を煽り、宣伝に利用しようとしている魂胆はどこにあるのか、そのねらいについて考えて行きたいと思います。
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映画の感想から
このところ、たてつづけにアメリカの原爆開発・核実験関連の映画を見る機会がありました。原爆開発者の苦悩を描いた『オッペンハイマー』(シネマde憲法)、アメリカの核実験による放射能汚染について描いた『サイレント・フォールアウト 乳歯が語る大陸汚染』(シネマde憲法)といった映画です。そうした中で、1980年代に作られ、ずっと気になっていたのが今回ご紹介する『アトミック・カフェ』というドキュメンタリー映画です。
原爆や放射能のことを、アメリカの国民(庶民)は、どのように思っているか、また教えられてきたのかを知りたいと思っていました。
この映画は映像のほとんどの部分を、アメリカ軍の広報映画や教育映画、原爆にどう対応するかを啓発するラジオ番組、テレビ番組を使って構成しています。この作品独自のナレーションはありません。ラジオの音声には、その当時の写真や映像をバックグラウンドに当て、また音声のない映像には、当時流行っていた原爆などのフレイズの入る歌や楽曲をのせています。
当時の核の「真実」を伝える報道と、それを受け入れていた時代の空気を巧みにまとめ、作り手自身が伝えたい皮肉を込めたメッセージに作り替えています。
そうして、原爆開発当時、政府や軍がどのように意図的に、原爆の被害を軽く印象づけたいとするプロパガンダをまき散らしていたかが浮かび上がってきます。
その情報は軍や政治が都合よく、都合の悪いものは隠して、科学的な根拠も何もなく、国民の安全や健康など二の次で核開発競争を第一に動いていたかがよくわかります。国家や軍は国民の生命を守らない、政権を守るためには平気で国民の生命をも犠牲にするということがわかります。
なかでも「原爆が落とされそうになったらどうすれば良いか?」の回答にはあきれかえります。DIYで庭に小屋を作るかのようにシェルターを作ること呼びかけます。避難訓練はとにかく頭を隠せばよいと「教育」している様は、可笑しさと愚かしさに満ちています。
しかし、この70年前のアメリカの姿を笑う材料ではなく、今でも、わが国では、同じようなおかしい、愚かしい政策が粛々と大まじめに行われていることを知ると、慄然とします。
北朝鮮の弾道ミサイルの飛来への「注意」を呼びかけるJアラート。沖縄や東京、埼玉でも行われた市民、学校の避難訓練。誰もがそんなことは無いだろうとタカをくくっていても、それが職場の決まりとなれば、おかしいとも、疑問を投げかけることもせずに黙々と従う。その異常さに背筋が寒くなっていきます。とくに戦争になる危険を煽る目的で学校で行われた「避難訓練」。小学生に逃げて、隠れることを指導しても、どうすれば良いのか具体的には何も言っていません。埼玉では「ミサイルが飛んできたらどうすれば良いか?」の質問に「ヘルメットを被っていたら助かる」と教え、知事は「万が一あったら困るから、ヘルメットかぶって訓練をやるんだ」と答えたそうです。
そんなあやふやな話に、県知事以下、役人が、教育委員会が校長や教員が黙々と従っていること、どこか寒々としてものが感じられ、本土決戦を前に竹槍で、一人一殺を教え込まれた80年前の女性や子どもの哀れさを感じると同様に、いまもこうした教育を受けている子どもが哀れさです。
大人たちはミサイルの飛来を避難すれば安全とほんとに考えているのか、危機を煽る煽動宣伝だとわかっていながら仕方なく従っている教員。自分で考えてもおかしいと思うことをまるで踏み絵のように強要される、それに反対もしない、抵抗もしない、まさに教育の現場が今そういう理不尽な状況であることを見せつけられます。
映画は、アメリカがちょうど反共産主義の「赤狩り」が燃え上がった時期に重なります。そうした啓発宣伝がラジオ・テレビ番組などによって活発に、繰り返し行われていました。
今の日本ではマスメディアも、例えば「Jアラート」が発せられると、全局通常放送を止めて、その報道に従わなければならないということを強要されています。いつの間にそんな決まりができたのか、まさに改憲の眼目である「緊急事態条項」を先取りし、どんなことでも有無を言わさず従わせる権力をやりたい放題、都合の良い意識の浸透、洗脳に努めているかのようです。
映画では、赤狩りの経過の中で、原爆の情報のスパイをしたと疑われた科学者ローゼンバーグ夫妻の死刑のラジオ中継がショッキングでした。夫妻の名前は聞いていましたが、どういう事件だったか詳しく知りませんでした。この裁判がどのように進められ死刑になったのか、調べ直し知りたいと思いました。戦争の準備を進めるためにあらゆることを利用する政治が、いつ自分たちにも振りかかってくるかを考えるために。
冷戦、赤狩り、反共プロパガンダ。いま、この国で「中国が攻めてくる」、「北朝鮮からミサイルが飛んでくる」と煽り、その備えのために軍備を拡張しなければという宣伝に利用している政権、自治体。80年前のアメリカを包んだ可笑しさ、恐ろしさがこの国にも起こりうる、すでに着々と進められていることをこの映画は教えてくれます。
【スタッフ】
監督・製作:ケビン・ラファティ ジェーン・ローダー ビア—ズ・ラファティ
1982年製作/89分/アメリカ映画/ドキュメンタリー
法学館憲法研究所 シネマde憲法
(https://www.jicl.jp/articles/cinema_20240607.html)より
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