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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(289) 映画『彼女の名はサビーヌ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(289)
映画『彼女の名はサビーヌ』
(初出2009年2月23日掲載・蓼沼紘明 記)

289映画『彼女の名はサビーヌ』

重い自閉症の女性がヒロインのドキュメンタリーです。自閉症の方は思いの他多いといわれます。自閉症者に私たちはどう接すれば良いのか?治療体制の状況は?自閉症に限らない障害を持った方々の問題までも考えさせる映画です。監督は、一歳上の姉のフランスの女優、サンドリーヌ・ボネール。ヴェネチア国際最優秀女優賞を獲得した「沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇」その他多くの名演で知られています。初の監督作品です。医療のあり方を告発し、政府に働きかけることが撮影の第一の目的だったそうです。サビーヌは、親身になって世話してくれる姉だからこそ安心して撮影を任せ、自分も出演することによって役立ちたいと協力してくれました。妹への深い愛情、そして、障害を持っている人の人間の尊厳を教えてくれる作品です。

今は38歳になったサビーヌ。ある保護施設で暮らしています。「サンドリーヌ、明日も会いに来てくれる?」。同じ質問を何度も繰り返します。うつろな目、太り過ぎの身体。ちょっとした軽い仕事でも苦痛ですぐやめてしまいます。時に奇声を発し、暴力を振るいます。それが意思の表現方法です。でも、病院に居た頃よりは世話をする人も増え、薬も減らし、目の動きも活発になりました。周囲はできるだけ彼女を自立した存在として支えようと一生懸命です。

サビーヌは幼いころから少し変わっていましたが、医療事情が悪く、適切な診断のないまま成長してゆきます。サンドリーヌは、そんな妹を優しい眼差しで少女の頃から8ミリカメラに収めていました。陽気で美しく、批判精神に満ちた青春時代のサビーヌ。バッハのプレリュードを弾きこなす才能豊かなサビーヌ。カメラは、現在の彼女と元気な頃の彼女を交錯させます。
サビーヌがすっかり変わったのは、28歳で病状が悪化し精神病院に入院して間もなくしてからです。暴れないように大量の薬を投与され、感情表現を抑えられ、隔離されたりしました。5年間の入院で体重は30キロも増え、身体と精神の能力が失われてゆきます。

自閉症は何らかの脳の機能的な不全が根底にあり、知的障害を伴う場合とそうでない場合とがあります。いずれにしても早期の発見と適切な治療が必要です。しかし、フランスでは専門医や保護施設があまりにも不足していました。そのため、適切な診断もされることなく、一般の精神病院に隔離されて自立能力を奪っています。きちんとした医療を受ける権利が保障されていればと思うと、一人の人間にとって取り返しのつかないことです。「結婚して、子どもを育てて…」と希望を語るサビーヌの姿は胸に迫ります。

今、日本でも医療費の削減の観点から、様々な障害を持った方への支援の態勢が削減され、あるいは不十分なまま放置されています。障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが本来の望ましい姿であるとするノーマライゼーションの考え方に基づく施策も遅れています。かけがえのない人生の可能性の芽を摘まないために、多くの課題が待っています。

【映画情報】
【製作】2007年 フランス
【時間】85分
【原題】Elle sappelle Sabine
【監督・脚本・撮影】サンドリーヌ・ボネール
【出演】サビーヌ・ボネール

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