憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(292) 映画『松川事件』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(292)
映画『松川事件』
(初出2009年3月2日掲載・T.S.さん記)
なぜ今、松川事件なのか
1949年8月17日の未明、事件は起きた。そして、最終判決は1963年9月12日、東京オリンピックの前年である。
この事件は福島県松川町を通過する東北本線の上り列車の脱線転覆事故から始まった。それは何者かによる意図した事件だった。事件の詳細は、当研究所ホームページの「日本全国 憲法MAP」所収「松川事件」や「ときの話題と憲法」所収「下山、三鷹、松川事件」をご参照いただきたい。
戦後間もない激しい労働争議の中、真犯人は確定されていないが冤罪事件であり、また占領軍や当時の吉田内閣によって徹底的に利用され、労働運動や革新政党に大きな打撃を与えた事件だった。
映画のなかで明らかにされる自白強要、証拠隠滅・無視・捏造。
それは60年たった現在でも依然、繰り返されている。志布志事件、布川事件などは、新聞テレビで大きく取り上げられているが、日常的といっていいほど、交通事件を含め不当捜査、不当判決がおこなわれて、苦難の人生に立たされる人は後をたたない。
起訴されれば犯罪者扱い、同時に真実でないことがあたかも真実として流れる警察による情報操作も繰り返されている。
今も「松川事件」が起きているのである。
映画になにができるか
松川事件は権力側の一方的な攻撃であるとともに国民側の公正裁判闘争や世論形成運動の面も強調しなくてはならないだろう。
この映画の特徴はひとつの事件の記録映画でなく、裁判闘争の過程で作られ、闘争勝利の手段のひとつとして、会員券というカンパによってつくられた映画であることである。
被告人の無実を訴える地道な努力、それを支援した人々、証拠の発見に貢献した新聞記者。必ずしも進歩的とはいえない川端康成、志賀直哉、吉川英治など文化人による公正判決要求書、広津和郎による中央公論での連載、総評や国労、日本ジャーナリスト会議など全国組織「松川事件対策協議会」が結成された。そして一審二審判決の公判記録で作られた映画「松川事件」の上映運動(松川劇映画運動 観客動員370万人)となって、幅広い国民運動となり、無罪判決を勝ち取り、国家賠償裁判においても国家機関による違法行為と認定された。
今、日本では自衛隊の海外派遣、憲法の空洞化、改憲の動きがある。また不当判決も続く。それに抗する思想信条を越えた幅広い国民的運動を形成するにはどうすればいいのか、裁判で正当な判決へ導く運動を大きくするにはどうすればいいか。
その力のひとつとして、人の理性と感情と共感性にはたす映画という媒体の映像の力を信じたい。
松川事件当時を知っている人が少なくなった今、そして冤罪事件・不当判決が続く今、多くの人に観ていただきたい歴史的・現代的価値のある映画である。
松川事件製作実行委員会作品
スタッフ
監督:山本薩夫
製作:伊藤武郎 絲屋寿雄
脚本:新藤兼人 山形雄策
撮影:佐藤昌道
美術:久保一雄
音楽:林 光
キャスト
宇津井健
下元 勉
宇野重吉
小沢弘二
岸 輝子
北林谷栄
発売:株式会社新日本映画社
提供:独立プロ名画保存会
販売:エースデュースエンタテイメント
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