憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (168) 『サン・ジャックへの道』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (168)
『サンジャックへの道』
(初出2007年3月19日掲載・H.Tさん)
国内外を問わず、人々が一緒に「歩く」プロセスを描くシネマが増えています。
それまでの知り合いと一緒に、多くはそれまで関わりのなかった人同士で。この映画は混合型です。仲が悪かった兄、姉、弟の3人が、さまざまな思いを胸に持つ6人の同行者とともに、フランスからスペインの西端にあるキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ(フランス名サン・ジャック)まで、1500キロの巡礼に旅立ちます。ここは、エルサレム、ローマと並ぶキリスト教3大聖地の一つです。
「歩く」シネマが増え、それが人気を博しているのはなぜでしょうか。日常生活における閉塞感が深まり、そこから脱出して自分を見つめ直してみたい、という気分が広がっていることと関係しているかもしれません。
お金は持っているがストレスから薬漬けの兄、威圧的な感じの中年教師の姉、アルコール依存で文無しの弟は、亡き母の遺産を相続する条件として、思いがけず巡礼路を一緒に歩くことになります。ツアーの同行者は、山歩きと勘違いして参加した友だち同士の若い女性2人、アラブ系移民の少年、そのいとこの読書きもできない少年など個性的な6人です。
巡礼者たちは、緑に恵まれ、古いお城もある美しい丘陵地帯を共に歩き、お互いに触れ合うなかで、それまでのストレスから次第に解放され、自分たち本来の身体感覚に気付きます。兄は薬なしでも生きていけることを知り、姉は少年に読書きを教える中で人々に心を開いてゆきます。
生存競争が激化する経済社会において、多くの人がモノなどの欲望や消費のためのコマとされ、バラバラにされつつあります。一人ひとりの個性が尊重され(憲法13条)、心身の健康を取り戻し、絆を結ぶことは可能だ―そのためには、時には、日常から離れた世界に自分を置いてみることも必要かもしれない―というメッセージを伝えてくれる映画です。
【映画情報】
製作:2005年 フランス
監督:コリーヌ・セロー
原題:Saint Jacques…La Mecque
時間:108分
出演: ミュリエル・ロバン/アルチュス・ド・パンゲルン/ジャン=ピエール・ダルッサン
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