憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (184) 映画『クラッシュ』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (184)
映画『クラッシュ』
(初出2007年6月18日掲載・H.T.さん記)
冬、クリスマス間近のロサンゼルスの24時。深夜のハイウェイでロス市警察の黒人刑事グラハムと同僚でスペイン系の恋人のリアは、交通事故に巻き込まれます。車から降り立ったグラハムは、偶然事故現場脇で発見された、若い黒人男性の死体の捜査に引きつけられます。
この事故が起きる前日からの36時間の様々な出来事が差しはさまれています。自分の店が度々強盗に遭うことから銃砲店に銃を買いに行ったところ、イラク人に間違われるペルシャ人の雑貨店主。肌の色の違いで差別されることにいらつき白人から強奪した車で逃走中、韓国人男性を轢いてしまう若いアフリカ系黒人の2人組。娘想いのヒスパニック系鍵の修理工と彼を不審者扱いする白人地方検事の妻。人種差別主義者のベテラン白人警官に屈辱を受ける裕福な黒人TVディレクターとその妻。さまざまな人種・職業・階層の多く登場人物たちが、思いもよらない角度からの“衝突”の連鎖反応を繰り広げ、それぞれの人生が翻弄されてゆきます。愛を交わしつつも、憎しみをぶつけ合い、哀しみに打ちひしがれ‥‥。
幾重にも重なるすさまじい人種差別。そして不寛容、嫉妬、恐怖。もう救いがたいのか。しかしそれは多分に、無知、無理解、先入観、偏見に基くことが示唆されます。人間には単純に善人と悪人がいるのではなく、両面を複雑に持ち合わせていて、両者の垣根は低いことが画面から伝わってきます。白人からもペルシャ人からも差別を受け難癖をつけられるヒスパニック系修理工の耐える姿勢や人種差別主義者の白人警官のその後の優しさなど、多くの印象的な場面も繰り広げられます。他人を信頼することがどれほど大切かを感じさせてくれます。
この作品は『ミリオンダラー・ベイビー』で脚本家デビューを果たしたポール・ハギスの監督デビュー作です。大ヒットし、05年のアカデミー賞で作品賞・脚本賞・編集賞を受賞しました。大変な差別社会でありながらもそれを乗り越えて未来への希望を感じさせてくれる、奥深い作品です。
【映画情報】
製作:2004年 アメリカ
監督/原案:ポール・ハギス
原題:CRASH
時間:112分
出演:サンドラ・ブロック/ドン・チードル/マット・ディロン/ジェニファー・エスポジト/ウィリアム・フィットナー
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