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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (186) 映画『それでも生きる子供たちへ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (186)
映画『それでも生きる子供たちへ』
(初出2007年6月18日掲載・H.T.さん記)

映画『それでも生きる子供たちへ』

貧困、内戦、エイズ。そしてどこにでも見られる夫婦のいがみ合い。世界の子供たちが置かれた過酷な状況を7本の短編で綴ったオムニバス映画です。

エンドロールに、“誰でも昔は子供だった。覚えている人は少ないが”の文字が流れます。子供時代の記憶はあるけれども、その時どんな気持ちで、何を考えていたのか、いなかったのか、忘れてしまっていることが多いのではないでしょうか。7人の監督たちが一生懸命子供の視点に立って、子供の眼からみた世界を描いています。

<第1話> ルワンダで「自由」の名のもとに強制的にゲリラ部隊に入隊させられた声変わりもしていない少年兵の話。真夜中、時限装置つきの爆弾をしかけることを命じられて侵入した先は、自分が通おうとしても通えない学校の教室でした。童心があちこちに満ちている教室の飾りをいとおしそうに見入る少年。その教室に集まる子供たちを殺さなければならない少年兵の顔に涙が走ります。

<第2話> 窃盗で少年院に入った15歳の少年ウロスは、出所したら理容師になる夢を持って院での生活に前向きでした。しかし、出所したウロスを待っていたのは、窃盗団である父母。以前と変わらない家庭。ウロスにとって自由とは何でしょうか。

<第3話> ニューヨーク・ブルックリンに住む少女ブランカの両親はHIV感染者。父親は“砂漠の嵐作戦”(湾岸戦争)で障害も受け、麻薬常習者。ブランカはエイズ・ベイビーと呼ばれ学校でいじめられます。

<第4話> サンパウロの高層ビル群に接する貧民街に2人だけで住む兄と妹の物語。ダンボールや屑鉄類を集めて売る逞しい毎日を送っています。

<第7話> 中国の対照的な家庭環境で育った2人の少女の物語です。桑桑は、何不自由ない裕福な家庭で育ちましたが、いがみ合う両親の間で孤独です。捨て子の子猫(シャオマオ)は、そのような子供をかき集めて花売りをさせ、稼ぎがないと食事も与えない親方の家で暮らします。学校にも行けませんが、優しい心の持ち主です。

子供たちは、生来的にかけがけのない宝物を持っています。忘れてしまった大人たちに、宝物が投げかけられます。
一つは、どんな情況に追い込まれても、ひたむきに今を生きる力でしょう。子供たちには、それしかないのですから。第4話が端的に物語っています。第7話、子猫の花束売りもけなげです。その子猫から花束をもらって無邪気に喜ぶ桑桑の姿を見て、親子心中寸前の母親は生命の尊さに気付きます。
二つ目は、勉強したい、という欲求です。ほとんどの話に共通しています。憲法26条の「教育を受ける権利」は、学習権を基礎にしています。学習したい、という気持ちが子供にとっていかに切実か、大写しの顔が訴えています。
そして、打算や計算をしないで相手に喜んでもらうことを大切にする気持ちも宝物でしょう。親方から殴られるのは分かっていても、あるいはそんなことは忘れて、ただで花束を桑桑にあげてしまう子猫のこの上ない笑顔。

政治や社会に起因する劣悪な環境、あるいは子供そっちのけで憎み合う夫婦。標的になって最も被害を受けるのは自分を守る術を知らない子供たちです。7本の作品に共通しているのは、圧迫される子供たちからの悲鳴であり告発です。それでも、やがて宝物を失っていくであろう子供たちを、大人たちは見て見ないふりをすることも可能です。子供に向き合うことを迫る映画です。

今、「格差社会」が地球を覆っています。「機会の平等」(憲法14条1項)は、近代立憲主義の基本理念の一つです。しかし、「普遍的」であるはずの人権は、先進国の憲法の建前に止まっていたことが、浦部教授の歴史講座で詳しく語られました。生まれる場所や環境を選べない世界中の子供たちが、「機会の不平等」の上に安住している大人たちを鋭く告発しています。「不平等」や「格差」の典型例が、映画に頻出している児童労働、しかも強制労働です。世界に30万にいると言われる少年兵は、究極の強制労働と言うこともできるでしょう。7月4日開催の「戦争をしない国 日本」出版記念イベントでは、戦争の問題を歴史から学びます。

さて、映画のタイトルは「子供たちへ」です。観客は、大人たちばかり(但し、20代の女性が過半数だったのは特徴的でした)なのに、なぜなのでしょう?

【映画情報】
製作:2005年 イタリア・フランス
時間:130分
原題:All the Invisible Children
監督:ステファノ・ヴィネルッソ他
出演:ダニエリ・ヴィコリト他

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