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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (187) 映画『イラク―狼の谷―』

公開日: : シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (187)
映画『イラク―狼の谷―』
(初出2007年7月9日掲載・H.T.さん記)

187映画『イラク―狼の谷―』

舞台は2003年7月、イラク北部クルド人自治区です。この地は、クルド人を主体に、トルコ人、アラブ人が住み、イラクに侵攻(侵略)した米軍が存在しています。
ある日、トルコの同盟国であるはずの米軍がトルコ秘密司令部を急襲し、トルコ兵を連行する事件が実際に起きました。「The Hood Event」事件といわれる、頭に白い頭巾をかぶせた理由なき拘束は、誇りを重んじるイスラム教徒・トルコ国民にとって、屈辱的で忘れられない日となり、このトルコ映画が製作される原動力となりました。当時、トルコ議会は、北からイラクを攻めようとした米軍の領土通過を拒否して、アメリカとトルコはギクシャクした関係にありました。また背景には、映画にも出てきますが、アメリカは、3民族の対立関係を利用、促進して、イラク、さらにはアラブ全体に対する支配を強化する戦略があります。

ストーリーは、「The Hood Event」事件に抗議するトルコの諜報機関と米軍との戦いを軸にしています。更に、映画には、多数の市民の死者を出した米軍による結婚式場の襲撃事件、米兵による捕虜虐待事件やイスラム過激組織による欧米ジャーナリストの殺害など実際の事件を随所に挿入しています。

映画は、2006年2月にトルコで封切られ、トルコ史上最大の動員記録を樹立し、国民の15人に1人が観ました。さらに中東全域でも大ヒットしています。他方、アメリカでは未だ公開されていません。

今イラクでは、毎日のように市民を含む人々が殺されています。そして、日本では、イラクで人が殺されることが日常的なこととして、多少の死傷者が出た程度では一般のメディアでは報道もされません。このことが大きく影響して、私たちの無関心化が進行しているように思われます。航空自衛隊が頻繁に武器を携行した米軍兵士をイラク北部の戦闘地域にまで運ぶことによって、日本もこの戦争に「参戦」しているにも拘わらず、です。

日本におけるイラク戦争の情報の多くは、欧米から入ってきます。中東に住む人々自身の視点に立つ情報はなかなか入って来ないか、小さな位置づけです。日本におけるこの映画の上映状況も、これを反映しています。それ故、親米的とされてきたトルコでさえ、この反米映画が社会現象にまでなった事実を知ることの意義は小さくないでしょう。また、自爆テロの実際がいかにすさまじいものであるか、映画で直視することによって、戦争に対する見方が変わるかもしれません。

この映画は、アクション性の高い娯楽作品としての性格も見られます。しかし、映画を貫いているものとして、「我々がコーランの教えを忘れ いがみ合っていることが問題なのだ。自爆テロを繰り返せば ますます我々は弱くなる。」(劇中、ケルクーキ導師のセリフより)という反暴力の強いメッセージを感じます。憲法9条の思想がここにも見られます。

今私たちも参加しているイラク戦争の歴史の背景を学び、この戦争を見る眼を多角的にするうえでも、是非お薦めしたい映画です。

【映画情報】
製作:2006年 トルコ
時間:122分
原題:Kurtlar Vadisi:IRAK /VALLEY of the WOLVES IRAQ
監督:セルダル・アカル
出演:ネジャーティ・シャシュマズ/ ハッサン・マスード /ビリー・ゼイン /ゲイリー・ビジー

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