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映画「わたしの描きたいこと─絵本作家クォン・ユンドクと『花ばぁば』の物語」

公開日: : 上映会, 戦争と女性, 日本の戦争

映画「わたしの描きたいこと─絵本作家クォン・ユンドクと『花ばぁば』の物語」
わたしの描きたいこと181220入稿用-2

上映情報

と き:2018年1月27日(日)13:30〜16:40
ところ:文京区民センター 3A会議室(地下鉄・春日駅/後楽園駅)
映 画:13:30〜15:15『わたしの描きたいこと─絵本作家クォン・ユンドクと「花ばぁば」の物語』
お 話:15:30〜16:40「シム・ダリョンさんとの交流」
立教大学非常勤講師 李・リョンギョンさん

李・リョンギョンさんはこの絵本のモデルになったシム・ダリョンさんを支援されていました。シム・ダリョンさんの押し花画を見せていただきながら、お話を伺いたいと思います。

参加費:一般1000円 学生 500円
主 催:憲法を考える映画の会
問合せ:090-1261-5434

『わたしの描きたいこと─絵本作家クォン・ユンドクと「花ばぁば」の物語』

この映画は、元日本軍慰安婦だったシム・ダリョンさんのお話を聞いて、そのお話を絵本にしたクォン・ユンドクさんという絵本作家の創作の過程を追ったドキュメンタリーです。
もともとその絵本の制作は、日本、中国、韓国の三つの国の絵本作家達が、子ども達に読んでもらおうと「平和絵本」シリーズとして企画されたものです。
ところが、この絵本は日本では出版されませんでした。そこにはどのような力が働いていたのでしょうか。

わたしの描きたいこと 花ばぁば(表紙) クォン・ユンドク1

 

映画「わたしの描きたいこと 絵本作家クォン・ユンドクと『花ばぁば』の物語」の感想

日本の絵本作家が呼びかけ、日中韓で子ども達に読んでもらう「平和絵本」シリーズが企画されました。それに応えた韓国絵本界の第一人者クォン・ユンドクさんが、元日本軍「慰安婦」だったシム・ダリョンさんに話を聞いて、絵本をつくろうと取りかかるところからこの映画は始まります。

はじめ好意的にそのテーマを受け入れていた日本の出版社ですが、昭和天皇の像を日本の軍隊の象徴のように描くところなどいくつかのところの表現に難色を示すようになります。クォン・ユンドクさんは何度も何度も描き直します。その過程の中にクォン・ユンドクさんの「わたしの描きたいこと」が明らかになっていき、映画を見ている私たちにもそれが伝わってきます。

しかしこうしてできあがった絵本『花ばぁば』は、韓国と中国では出版されたのに、日本では「政治状況」から、今は出版ができないという連絡が届きました。

「政治状況」とは、日本全体の右傾化であり、右翼からの攻撃に対する出版社のおびえがあるようです。結果的に出版社は右翼の圧力に屈したということになります。

しかしそれは、そのようなことがあったことに無関心でいた、仮に知っていても何もしようとしなかった今の私たちも、その圧力に屈して、こうした時代を許しているということだと気づかされました。

もうひとつ、日本の出版社の人たちが難色を示した理由があります。

「性について教えられていない子ども達が、性暴力そのものである慰安婦の被害を描くことで、間違った理解につながる危険がある」と言います。ここにも、問題になることは包み隠そうとする、あるいは何もしないでそのままにして逃げている日本の大人の姿が明らかにされたように思いました。「戦争責任」、「歴史認識」、「侵略戦争」に対して戦後の日本人の大人の、つまり私たちがやってきたことと同じ根がそこにあるとあらためて気づきました。

絵本作家クォン・ユンドクさんの話の中で、クォン・ユンドクさん自身も性暴力の被害者であったことが語られます。「だからこそ慰安婦のシム・ダリョンさんの受けた苦しみを、伝え、描くことが自分にはできると思った」といいます。創作の中で血を吐くような苦しみを自分の中で繰り返し、ようやく形になった絵本だったのだと思います。

映画は、性暴力の被害者である女性の話を描く女性の苦しみを、よくわかった人が捉えていることを強く感じる映画でした。シム・ダリョンさんが考え、悩んでいることの中味を見る者に想像させる的確な描き方です。

そうした思いをもつクォン・ユンドクさんですから、子ども達がこの絵本を見てどう感じるのかを訪ねて学校に足を運びます。日本の小学校や高校にも訪ね、子ども達の感じたことに耳を傾け、たどたどしくも感じたことを話す子ども達の姿を見つめます。

ふと、韓国の、とくに若い人たちは、日本政府の、あるいは日本人の「慰安婦問題」に対する対応をどのように見ているのだろうかと考えました。この絵本が日本では出版できないと言うことについてもどのように受け止めているのだろうかと。

クォン・ユンドクさんの日本や日本人を見る目も変わっていったことも、この映画を通してわかってきます。クォン・ユンドクさんが日本という国に対して感じていることが編集者たちの議論の中で語られます。

「日本も悪いけど慰安婦の人たちに対するその後の私たちも悪い」「日本の兵士も被害者だったと思っています。」「ドイツは間違っていたと客観的に見ることができるけど、日本に対しては感情が入る。」「その違いが何かというと、ドイツは戦後の清算をきちんとした国で、日本はそれをしていない国だからです。」「そうそれが問題。」「戦後の清算が終わってないから、われわれは日本をそういう目でしか見られない。日本が持っている多くの可能性や長所、私たちが学ぶべきすべてのことを、植民地という観点で固定させてそれ以上のことを見られないってことよ、そういう状態を越えたいというか、私たちがそれを見なかったからと言って、私たちの子孫までも見られないようにすべきかってことです」

子ども達に、読んでもらう本を渾身を込めてつくる人だからこそ、子ども達の未来のことを考え、そこで苦しんでいるのだと思います。私たちはそれに対してどう答えていけば良いのでしょうか。

2015年予定していた出版社からは出版を先に延ばす話が届きましたが、絵本『花ばぁば』日本版は、クラウド・ファンディングを通じた支援によって、2018年春、「ころから」という出版社から出版されました。

私たちもこの絵本をもっと紹介していきたいと思います。そしてその絵本ができるまでの創作の苦しみを描いて、私たちは何をなすべきかを、私たちに問いかけてくるこのドキュメンタリー映画を上映して行きたいと思っています。

 【スタッフ】

監督:クォン・ヒョ

プロデューサー:アン・ボヨン

制作:ザ・ビッグ・ピクチャーズ

【出演者】

クォン・ユンドク(絵本作家)

シム・ダリョン(日本軍「慰安婦」)

田島征三(絵本作家)

浜田桂子(絵本作家)

 

韓国語原題「描きたいこと」 93分/2012年制作/韓国映画/ドキュメンタリー

 【上映情報】

・  このDVD 『わたしの描きたいこと』は「ころから」株式会社から、

上映権付きDVD:18,000円、個人鑑賞用DVD:3500円で販売されています。

・  また絵本『花ばぁば』も同じく「ころから」株式会社から1800円で販売されています。

・  お問合せは「ころから」korocolor.com

〒115-0045 東京都北区赤羽1-19-7-603 TEL:03-5939-7950

 

 

 

 

 

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