ありふれたファシズム─野獣たちのバラード─
公開日:
:
最終更新日:2019/03/23
作品紹介
ありふれたファシズム─野獣たちのバラード─ の作品紹介
1971年日本での公開時は、邦題が『野獣たちのバラード─ありふれたファシズム─』でした。
しかし「野獣たちのバラード」では何の映画か想像がつきません。むしろ昨今の政治および社会にとっての問題は「ファシズム」と思いますので、原題『Ordinary Fascizm』から「ありふれたファシズム」を先に表記させていただきたいと思います。
【上映情報】
憲法映画祭2019
と き:2019年4月28日(日)10時〜12時10分
ところ:武蔵野公会堂ホール(吉祥寺駅南口2分)
プログラム:
10:00 「ありふれたファシズム」129分・1965年制作
12:10 講演 「ナチスの『手口』と緊急事態条項」
東京大学大学院総合文化研究科教授 石田勇治さん
14:00 「ショック・ドクトリン」 82分・2009年制作
15:40 「ベトナムを遠く離れて」 117分・1967年制作
18:00 「共犯者たち」105分・2017年制作
【解説】
これはファシスト・ドイツの記録映画であるが、単なる記録映画でなく、我々の心の中に巣食っているファシズムを白日の下にさらけだし、現在あらたに起り得るファシズムの世界を食い止めるための鋭い警鐘である。
ヒットラーの狂気は、平凡で善良な個々のドイツ人の日常的狂気の集約であり、ヒットラーただ一人が個性をもった人格者となり、ドイツ人に思考停止がはじまり、行動するロボットとなって、世界史上まれに見る悲劇が引き起こされたのである。
--監督は「十月のレーニン」のミハイル・ロンム、脚本はミハイル・ロンム、マイヤ・トウロフスカヤ、ユーリー・ハニューチンの共同執筆、撮影は、ゲルマン・ラウロフ、日本語版解説は宇野重吉が各々担当。
1966ライプチヒ国際記録映画祭グランプリ
「一年の九日」の巨匠ミハイル・ロンム監督の初の記録映画で、遺作となった。
原題は「ありふれたファシズム」。膨大な資料駆使するソビエトのお家芸とも言える記録映画であるが、従来のドキュメンタリーの概念を打ち破り、ファシズムの本質をスクリーンに描きだして、チャップリンの「独裁者」とも比肩される傑作である。
ナチス・ドイツの残虐な行状を暴いた内容だが、”ファシズムとは、人間が思考を放棄した時に起こる”と語るロンム監督は、何百万フィートという世界各国の 古いニュースや記録映画を収集。20世紀の埋もれていた歴史に光を当て、世界のあらゆる国にまたもファシズムヘの道が開かれていること、さらに日常生活に はびこるファシズム”ありふれたファシズム”を白日のもとに曝け出し、ファシズムの芽は誰にもひとりひとりの心の中にあることを明らかにしようとしてい る。
なお、ロンム監督は、他に劇映画「No.217の男」(44)、「密使」(50)でやはリファシズムをテーマにしている。
日本語解説版では、名優・宇野重吉がナレーションを担当し、その淡々とした語りが映像の残酷さを際立たせて、評判を呼んだことも忘れられない。
【あらすじ】
第1次大戦終了後、カイゼルの帝国が崩壊、 ドイツ革命が起こり、民主主義がこの国にも根づくかと思われた。だがこの時、ファシズムは芽生えていた。ミュンヘン出身のアドルフ・ヒットラーがいつの間にか新しい政党を組織し、陰謀と犯罪を通して遂に政権を握る。ドイツ民族の団結心と連帯感を謳いあげ、パレードを繰り返すヒットラー。ドイツ国内の熱狂とともに、ナチス支配による第3帝国の時代がやってきた。ヒットラーは、総統らしく振る舞うため、涙ぐましい稽古を積む。
科学も芸術もヒットラー の足下にひざまずき、書物は焼かれ、血の粛清が始まり、ユダヤ人は虐殺された。ナチスの聖書「わが闘争」の教義に忠実にドイツ軍は、ワルシャワ爆撃からソ連へ無警告攻撃、と四方に向かって電撃戦を開始した。ドイツ兵は、子供を抱く母を射ち、ソ連領内で残虐行為を繰り返す。
……冬将軍が到来しヒットラーは敗れた。ヒットラー最後の姿……
だが、ファシズムも一緒に減ぴたわけではなかった。ナチスの生き残りだけではない。新たに生まれたネオナチがドイツ以外の国々でも蠢いている。現代の若者たちはもうファシズムの恐怖を知らない。もう一度、あのどす黒い歴史の一ページをふり返ってみなければならない……
この映画は十五章の物語詩形式である。--プロローグ--ファシズムの厖大な資料から意味深いものを選びだして、観客とともに考えていこうとするものである。
☆突然ドイツ兵が子供を抱いた母親を射つ。多くの女子供が強制収容所へ引きたてられる。
☆ヒットラー著「マインカンプ(わが闘争)」の本が作られ、箱に納められ千年の間御霊屋にしまいこまれる。
☆ナチス・ヒットラー誕生までの経緯。ヒットラーが総統らしく振舞うための涙ぐましい稽古。☆そのころの世界各国首脳の動き。
☆ヒットラー政権誕生当時のドイツ国内の狂熱。
☆ナナス流種族理論の横行。
☆ドイツ民族の強固な団結心、連帯感。
☆演説をぶつヒットラー。総統らしいポーズを獲得し、その部下たちもサル真似。先輩ムッソリーニに習ったものだ。
☆一番優れた芸術はパレードである。これを演出する男、ヒットラーのみごとな煽動。
☆絶対の神、ヒットラーに従うすべてのドイツ人、昨日までの少年が、今日は見事に整列した兵士の中の一人になり、ヒットラーに宣誓する。
☆別のドイツ労働者階級に対する血の粛清が行なわれた。
☆子供が花束を捧げ、ヒットラーが抱きあげる感動的シーン。「大衆と接するには女に接する如くせよ、大衆は女と同じように力の強い者に服従したがるからだ」
☆スペイン内乱をきっかけにドイツ空軍が出動、そしてあのゲルニカの悲劇へ……ワルシャワ爆撃。ついにソ連へ無警告攻撃開始。
☆ソ連領進撃の兵隊たちが行なった残虐の数々。戦場にある人間の異常心理は人間として最も恥ずべき行為をなんの抵抗もなくさせてしまう。
☆冬将軍到来、ゲッベルスは全面戦争の必要を説くが、ようやく人々の心に思考がよみがえる。ヒットラー最後の姿、少年兵を閲兵する。
--エピローグ--いかなる時代に生まれようと、すくすくのびやかに育つ子供を、どう教育するかが我々の最も重要な課題なのである。
【作品情報】
タイトル ありふれたファシズム/野獣たちのバラード
原題 OBYKNOVENNYJ FASHIZM/ECHO OF THE JACKBOOT/A NIGHT OF THOUGHTS/ORDINARY FASCISM/TRUMPS OVER VIOLENCE
製作年度 1965年
上映時間 129分
製作国
ソ連
ジャンル
ドキュメンタリー
監督
ミハイル・ロンム
脚本
ミハイル・ロンムマイヤー・トウロフスカヤユーリー・ハニューチン
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