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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(260) 映画『この自由な世界で』

公開日: : シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(260)
映画『この自由な世界で』
(初出2008年9月6日掲載・蓼沼紘明 記)

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イギリスの、否、世界の社会派の巨匠ケン・ローチ監督が、「明日へのチケット」、「麦の穂をゆらす風」に続いて、また問題作を発表しました。
必死で働くシングルマザーと、世界でますます増加する各国の移民の労働問題を中心にして格差社会を描いています。これはグローバルな問題です。それを反映して、イギリス・イタリア・ドイツ・スペインの合作映画となっています。

原題は“It’s a Free World”。「自由」な世界でますます拡大する格差と収奪。自由とは何だろう、ということを「自由」を享受しその内側で主体的に生きる人間の側から問いかけています。

アンジーはイギリスのシングルマザー。働く意欲のない男と20代で別れ、小学生の息子を両親に預け、外国人労働者に仕事を斡旋するロンドンの事務所で働いています。仕事を軌道に乗せ、借金を返し、早く息子と一緒に暮らしたいアンジー。しかし、突然、クビにされます。彼女は思い切って、これまでの経験を生かし、親友のローズと共に自力で職業紹介事業を立ち上げ、各地からの移民労働者を集めて仕事の斡旋を始めます。事務所もなく野外の空き地で差配するアンジー。やがて、不法移民、不法滞在者を斡旋した方が儲かることを知ります。東欧や中東を含め、よりましな生活を求めて家族ぐるみで各国から集まってくる移民。彼ら彼女らは国外追放されることをおそれひっそりと劣悪な集合住宅などで暮らしています。まさに最底辺の生活。職業訓練もなく危険な仕事を低賃金で働かせることができ、利益も上がります。

事実上規制が緩やかで自由な斡旋。それゆえにアンジーは一線を越えた仕事の世界に入ってしまいます。アンジー自身も立場こそ違え、最底辺で働く無防備な超零細経営者。「搾取」に走る彼女は、斡旋先の企業から不渡り手形をつかまされ、「搾取」されるはめになり、人道的にも許せない行動に走ってしまいます。やがて過酷な扱いを受けた移民たちはアンジーに対し‥‥。

社会は不法移民を最底辺とする幾重もの格差の構造で成り立っています。国の経済、世界の経済は彼ら彼女らを抜きに語ることはできません。
自らも格差社会の弱者でありながら、格差の構造を利用して這い上がろうとして懸命にもがくアンジー。不法移民社会の中で生きる様々な人たちの生き様を描くことによって、格差社会の打破の道を広く問いかけている作品だと思います。

ともすれば、格差社会の恩恵を恩恵と感じずに享受しがちな私たち。「自由」は他人の基本的人権を尊重限りで保障されるという、現代の憲法の根本(憲法13条)の意味がグローバルな規模で問われています。

【映画情報】
製作:2007年イギリス・イタリア・ドイツ・スペイン合作映画
監督:ケン・ローチ
脚本: ポール・ラバティ
原題: It’s a Free World
時間:96分
出演:キルストン・ウェアリング/ジュリエット・エリス/レズワフ・ジュリック

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