憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(262) 映画『LOOK』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(262)
映画『LOOK』
(初出2008年9月22日掲載・蓼沼紘明 記)

私たちの行動はここまで監視され、データとして蓄積されているのか!9.11事件以後益々進展する一方の「監視社会」の実態を暴くアメリカの映画です。
監視社会化をテーマにしたアメリカ映画は、すでに1998年の「エネミー・オブ・アメリカ」があります。国家が盗聴、監視カメラ、情報収集衛星、社会保障番号情報の利用などで、国家にとって問題な人物を監視する恐さを描いたものです。2002年には、瞳の虹彩で人を識別し、追及する「マイノリティ・リポート」が制作されました。それから数年、監視システムは私たちの想像を超えて進化しています。
「LOOK」は、全編監視カメラによる映像で構成され、監視社会に生きる人々のリアルな日常をドキュメンタリータッチで描いています。会社の事務職員の働きぶり、デパートの従業員同士の私語、コンビニで働く従業員の様子、学校の駐車場に止めた車内での情事、さらにはトイレまで。多様な角度からカメラは私たちのプライバシーを丸裸にしています。映画は、観客の心の中にある覗き趣味をいつの間にかくすぐるかのようです。カメラは、2人組の強盗の犯行現場を押さえ、犯罪者の逮捕の決め手にもなります。このようにして、「安心・安全」優先の現代の空気の中で、アメリカ人の71%が監視カメラの増加に賛成し、37の州では試着室やトイレまでにもカメラの設置が許可されています。
では、「安心・安全」だけでいいの? 観客が立ち止まって考える材料を提供している映画だと思います。字幕は語っています。「アメリカ人は、平均1日200回以上監視カメラに撮影されている。」「国内に3000万台以上のカメラが設置されている」「毎週40億時間以上の映像が記録されている」
日本も同様の状況です。確かに、監視カメラ社会化は、犯罪の抑止、犯人の割出・検挙などに役立ちます。しかし、明確なルールのないまま、監視カメラを一人歩きさせると、個人の自由と尊厳にとって大きな脅威となります。また、国家による政治的悪用を可能にします。さらには、デジタル化された映像の加工による事実の捏造も問題になります。最高裁は、「みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由」として、いわゆる肖像権を認めています(憲法13条)。また、Nシステム(警察庁の自動車自動ナンバー読み取りシステム)について、「憲法13条の趣旨に反することになる余地がある」との裁判例もあります(2001年・東京地裁)。主権者である国民、市民が、監視カメラのあり方を監視できるルール・法システムづくりが急がれています(法学セミナー2003年4月号、石村耕治教授)。
【映画情報】
製作:2007年 アメリカ
原題: LOOK
監督:アダム・リフキン
時間:102分
出演:リス・コイロ/ヘイズ・マッカーサー/ジュゼッペ・アンドリュース/スペンサー・レッドフォード/ヘザー・ホーガン
上映館:シネセゾン渋谷にて公開中 全国順次公開
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