憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (9) 『灰とダイヤモンド』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (9)
『灰とダイヤモンド』
2004年8月9日 H.T.記
第2次大戦後直後の歴史の転換点に生き、死んでいく人間をドラマティックに描いた、世界の名作の一つである。
その社会性と芸術性の高さで欧州映画の中でも異彩を放っていたポーランド映画の巨匠アンジェイ・ワイダ監督の代表作。
舞台は、1945年、ナチス・ドイツが撤退した直後のポーランド。
まだソ連系共産党の支配を受けていない混沌とした時期である。
大戦中は対ナチスレジスタンス運動(ロンドン派)をしていた主人公マチェックは、ワルシャワ蜂起で多くの仲間を失った。
マチェックは、かつての同志でソ連系共産党地区委員長(労働者党書記)シチュカの暗殺を命じられるが、誤って別の男2人を殺してしまう。
そして、偶然知り合ったクリスティーナと出逢い恋に落ちる。
マチェックの気持ちはクリスティーナとシチュカの人柄に揺れ動かされる。
やがて、大戦後は明確な目的意識もなくテロ行為を起こす自分に対して疑問を抱き、苦しみながらもシチュカを暗殺する。
普通の生活への扉に気づきつつも、結局は自分も襲われ、ゴミ捨て場で凄惨な死を遂げる。
観る者はその姿に言葉を失う。
ワイダ監督は、マチェックの最後を克明に描くことで何を訴えたかったのであろうか。
そして、ダイヤモンドとは‥‥。
工夫に満ちた数々の独創的なシーンも見ものである。
その後のドラマ制作のヒントになったといわれている。
(註)ワルシャワ蜂起
1944年8月1日、ナチス占領下のワルシャワに存在した国内軍と呼ばれる地下組織はドイツ軍に対して一斉蜂起した。
すなわち、多数の者が反抗のために立ち上がった。彼らは、すぐそこまで到達していたソビエトの赤軍と呼応するつもりだった。
しかし、63日間続いた蜂起は、赤軍の助けを得られず失敗に終わり、ドイツ軍による大量虐殺が始まった。蜂起によるポーランド側の死者はワルシャワの当時の人口の5分の1にあたるといわれる。
この者たちが眠る墓地には、今も花やキャンドルが絶えない。
【放送】 NHK衛星第2⑪ 2004年8月17日(火)20:00~21:42
【年代、国】 1957年ポーランド映画
【原題】 POPIOL I DIAMENT
【監督】 アンジェイ・ワイダ
【出演】 ズビグニエフ・チブルスキー エヴァ・クジジェフスカ
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