米倉斉加年「戦争とは人が人を殺したり殺されたりすること。平和とは、人が生きられるということ」
米倉斉加年「戦争とは人が人を殺したり殺されたりすること。 平和とは、人が生きられるということ」
転載(『週刊金曜日』8月23日号 新・わたしと憲法シリーズ)
米倉斉加年さんが亡くなりました。
米倉さんは、市川房枝さんの選挙応援を買って出ていたご縁で『八十七歳の青春─市川房枝生涯を語る』のナレーターをお願いしました。
『週刊金曜日』の記事に米倉さんの憲法に対する発言があったので、一部ブログから転載させていただきます。
今の憲法は戦争を二度としないためにできたのだから、それを変えるのは、戦争をまた始めるということとリンクしているのはすぐわかる。
敗戦のとき11歳でしたが、弟は戦争中に餓死しました。
父親が戦争にとられ、女手一つで僕らを育てた母が困窮し、お乳が出なくなったからです。
そんな例はたくさんあったはずで、僕らの五歳前後上の女性も未婚者が本当に多い。
同年代の男性がおびただしく死に、さらに婚約者や恋人が次々に死んでいったからです。
学童疎開で田舎に行き、家に戻ったら親や家族が空襲で殺されていて孤児になった子どもたちも、どれほどいたか。
そんな時代をひもじい思いをして生き抜いてきた僕らだから、本能的にわかる。
「戦争とは人が人を殺したり殺されたりすること。平和とは、人が生きられるということ」とね。
理屈じゃないんだ、これは。
だから僕らがいちばん欲しているのは、戦争をしないこと。
死ぬためではなく、僕らの命と生活を守るためにあるのが憲法でしょう。
そこには愛する人を失い、あるいは愛する人がいながらこの世を去らねばならなかった無数の人びとの思いが込められているんじゃないのか。
そしてそういう思いから、この憲法が生まれたのではないのか。
だからこそ、言いたいんです。
どうあってもこの憲法を大事にしたい、絶対に根幹である九条は変えさせたりはしないと。
振り返れば、多くの人びとが戦争で死んだのはこの国だけではないはず。
戦後そういう現実を前に、人間の何かの良心の光が一瞬輝いてこの憲法が生まれたんだよ。
だってそこには、「戦争はしません」という、人類ができなかったようなことが理想として掲げられているんだから。
「国防軍」なんて書かれてある「新憲法草案」が登場したいま、僕らの世代こそがこうした声を叫ばねばならないでしょう。
憲法が示しているこの国の正しい道を、僕らの子孫にも、これからもずうっと歩んでほしいからね。
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米倉さんのご冥福を祈るためにも、「憲法を示しているこの国の正しい道をこれからも歩んでいくために努力しなければ、と思いました。S.H.
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