憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (194) 映画『夕凪の街 桜の国』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (194)
映画『夕凪の街 桜の国』
(初出2007年8月20日掲載・H.T.さん記)

こうの史代が2003年、『週刊漫画アクション』に掲載した短編がボリューム豊かな映画になりました。
一つ目の舞台は、原爆投下から13年後の広島。母(藤村志保)と暮らしている皆美(麻生久美子)は、ある日、同僚から愛を告白されます。しかし、原爆で殺された父や妹の姿が頭から離れません。自分が生き残ってしまったことの負い目を抱きしめて生きています。3年前の夏上映された映画「父と暮らせば」で宮沢りえが演じた美津江も同じでした。生きている者をも、申し訳ないという「負い目」の世界に追い込んでしまう原爆の、この世のものとはいえない怪物性、凄まじさ。やがて皆美にも原爆症の症状が…。
二つ目は、皆美の弟の旭(堺正章)一家の話。旭は、胎児性被爆者の京花と結婚して東京で暮らし、今70歳。京花は38歳で亡くなりました。旭はある日自宅から突如広島に向かいます。娘の七波はこっそり後を追い、親たちの過去を知り、被爆2世の自分を見つめ直しつつ、元気に生きていこうとします。
筆者は、数年前の白昼の東京・高田馬場駅前で、顔面蒼白でもがきながら倒れていた壮年の男性に出会ったことがあります。声も出せないその方は、震える手で被爆者健康手帳を内ポケットから出して見せてくれました。救急車を呼びましたが、今もその方の表情を鮮明に想い出します。
被爆者健康手帳を持っている22万人のうち、原爆症と認定され医療特別手当を受給されているのはその100分の1に過ぎません。他方、私たちの政府は、アメリカの核に依拠して核兵器自体は肯定し(「非核3原則」が空文であることは公知の事実です)、東北アジアの緊張を高めるのに一役買っています。
「原爆の投下から62年がたち、街の話から国の話になってしまうタイトルにも意味がある」とは、監督の弁です。被爆2世、3世の悲劇は今後も続きます。また一つ、核兵器への怒りを静かに、そして深くつなげていく映画が加わりました。
【映画情報】
製作:2007年 日本
時間:118分
原作:こうの史代
監督:佐々部清
出演:麻生久美子/田中麗奈 /吉沢悠/ 中越典子/ 藤村志保/ 堺正章
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