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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (217) 映画『椿三十郎』

公開日: : シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (217)
映画『椿三十郎』
(初出2008年1月1日掲載・H.T.さん記)

217椿三十郎

出撃の合図を告げる、おびただしい椿の花びらを浮かべた池の流れ…、三船敏郎と仲代達矢の一騎打ち…。45年前に大ヒットした黒澤明監督の映画「椿三十郎」です。名画として時折放送されるテレビでご覧になった方も少なくないでしょう。これが、森田芳光監督によってリメイク上映され、話題になっています。名前のとおりかっこいい「椿三十郎」役は、織田裕二が演じています。但し、三船は重厚さや威圧さを売りにしていましたが、織田は、明るさ、親しみやすさをアピールしています。
総指揮の角川春樹氏は言っています。「今は、時代劇を大人しか見なくなった。若い人に見てもらえる時代劇を作りたかった」。
時代劇をどう見るか、考える好素材だと思います。

物語は、ある晩、雑木林に囲まれた社殿で、正義感に溢れる9人の若侍が密談をしているところから始まります。藩の次席家老らの汚職を黙視できず、意見書を城代家老に差し出しましたが、次席家老と同じ穴の狢である大目付らの策謀にはまり、逆に絶対絶命のピンチに追い込まれます。そこに助太刀に現れたのが、三十郎でした。彼らはたった10人で、悪人どもに連れ去られた城代家老の救出を目指して、世間をも味方につけた圧倒的多数の悪人どもと戦います。

大目付といえば、今では検察や警察に当る政治の監視役です。それが、政治を司る家老と一体となってうまい汁を吸っている。それに対して、身を投げ出して対抗して行く若者たち。ともすれば、見て見ないふりをして我慢してしまいがちな、平成の時代の私たちに喝を入れてくれます。

双方の策略のせめぎ合いも見ものです。敵の変転する策謀を瞬時に見抜く上、腕も抜群で派手な殺陣を繰り広げる三十郎。そして、随所に溢れるなんともいえないユーモア。マンガ好きな方にも喜ばれるでしょう。お正月です。娯楽性の高い映画で、スカッとしたい方にお薦めです。

しかし、劇場を後にした観客は、もしかしたら映画の策にはまるかもしれません。角川氏は、上述の言葉に続けて言っています。「この映画を見てくれた若い世代からは『時代劇なのに面白い、笑える、格好良い』という言葉をもらっている。これを出発点に、“若い時代劇”を作っていきたい」。
見終わって、“用心、用心”と思いました。すなわち、政治に対するうっ積した不満をガス抜きされて終わってしまったら…。今度は、こちらが策を練る番です。映画からは、現代の、政・財(司法を含む)・官の癒着の問題まで思いめぐらす必要があるでしょう。裁判に、政治家から直接圧力がかかることさえあります。“世論”の形成には、映画ももちろんですが、テレビドラマも重要な役割を果たしています。今の不正を堂々と厳しく追及するドラマは活性化しているでしょうか。

三十郎からは、現代の不正に果敢に挑戦するスピリットとスキル(知略と実行力)を学べると思います。そして、むやみに人を斬ることの虚しさも。

【映画情報】
制作:2007年 日本
製作総指揮:角川春樹
監督:森田芳光
原作:山本周五郎「日日平安」
時間:119分
主な出演者:織田裕二/豊川悦司 /松山ケンイチ/鈴木杏 /中村玉緒/小林稔侍/藤田まこと

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