憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (126) 『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (126)
『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』
(初出2006年9月4日掲載・H.T.さん記)
韓流ドラマのブームが続いています。
家族や身近な人を思う心情の強さや純粋な感情表現が受けています。
身近に肉親の悲劇を経験している朝鮮民族の苦難の歴史があることも理由の一つになっているようです。
その意味では南北朝鮮のドラマを問いません。
もっとも、テレビなどで私たちの眼によく入るものは、
社会的な背景描写を捨象したものが選ばれているように思われます。
映画「ディア・ピョンヤン」も、家族の絆の強さを表に出しています。
しかし、まさに今とこれからの朝鮮との関係のあり方に迫る映画です。
この映画は、大阪に生まれ育った在日コリアン2世である映像作家梁英姫(ヤン・ヨンヒ)が
自分の家族をはじめは家庭用のビデオカメラで10年に渡って追ったドキュメンタリーです。
父親は、「北朝鮮」を純粋に信じ、祖国として選び、朝鮮総連の熱心な幹部活動家として、
30数年前、彼女の兄である3人の息子を、万景峰(マンギョンボン)号でピョンヤン(平壌)に送り出します。
彼女が6歳のときでした。月日が経ち、祖国の窮状を知った両親は、息子やその家族たちにせっせと仕送りを始めます。
使い捨てのカイロなど盛りだくさんに詰めながら、「一番喜ばれるのは鉛筆と消しゴムだよ。」と、
いつも笑顔で家族を支える元気なオモニ(母親)。そんなオモニを「最高だ」と叫ぶ家族思いの陽気な父親。
しかし、祖国に絶対的な忠誠を捧げ続ける父親の側面を、日本で育った彼女はどうしても理解できず、苦しみます。
彼女たちは万景峰号に乗り、ピョンヤンの兄たちを訪ねるようになります。
万景峰号の船内、到着したピョンヤンの素顔、兄家族が暮らすアパートの様子、
お土産を受け取り体中で喜びを現す孫たち、義理の両親を温かくもてなす兄嫁たち、
道端で売っている赤いトウガラシなど、どれも家族としてだからできた貴重な映像です。
「生活はどう?」とカメラを向けても、ただ黙っている兄たちの微笑は総てを語っているかのようです。
月日がたち、最近では、娘英姫の考え方に父親(現在病気療養中)は理解を示すようになりました。
家族の離散や考え方の違いという複雑な問題を扱いつつも、一家の底抜けとも見える明るいキャラが全編を貫いています。
トークショーで監督は話していました。
「今は、日本人も朝鮮人も、個々人が顔を見て話ができるムードがあまりにもなさすぎます。
私たちは、どちらも、政治家が言う言葉をそのまま自分の言葉として話し過ぎています。
北朝鮮の普通の人々に関する情報がなさすぎます。なので、けっこう言い放題になっています。
先日も北朝鮮から来たスポーツ選手に対して、『えっ!北にも選手がいるんだ。コエー。おっかねー』という声を耳にしました。偏見をなくしてください。」「この映画で父親や家族の姿を通じて表現したかったのは、人権です。」
「社会主義じゃだめだとか、そういうことを言っているのではありません。」
終わってから監督と少し話しました。
当たり前のことながら、北朝鮮に住んでいる人も日々の幸福を願っている日本人と変わらない普通の人たちであることを理解し、市民レベルのさまざまな交流を広げることこそ、平和や人権の問題を解決するうえで緊急な重要課題であると感じました。
監督の勇気が伝わってきます。
ベルリン国際映画祭、プサン国際映画祭など、多数の国際映画祭で高い評価を得ています。
【映画情報】
制作:2005年 日本
監督・脚本:梁英姫
編集:中牛あかね
サウンド:犬丸正博
時間:107分
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