憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (151) 『ダーウィンの悪夢』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (151)
『ダーウィンの悪夢』
(初出2007年1月1日掲載・H.Tさん記)

琵琶湖の100倍の広さを持つ、タンザニアの湖ビクトリア湖は、多様な種類の魚類が棲み「ダーウィンの箱庭」と呼ばれ、住民たちに豊かな恵みをもたらしていました。ところが、約50年前に、誰かが外来種である大型肉食魚ナイルパーチをバケツ一杯ほど放ちました。ナイルパーチはすごい勢いで湖の魚を食い荒らし、生態系を破壊しました。人々の生活も一変します。周辺にはナイルパーチの加工工場が立ち並び、タンザニア第一位の輸出品として業者を潤し、その白身魚は日本やヨーロパの人々の食卓を豊かにしました。ナイルパーチを空輸する飛行機は帰りには武器を運び、先進国は武器輸出で儲けました。
他方、住民には地獄のような生活が待っていました。悪臭たちこめる生ゴミの山をかきわけ、工場から出る魚のアラを裸足で集め、ウジがわくアラを干して揚げて食べる人たち。ナイルパーチを空輸するパイロットなどを相手に身体を売って生活する女たち。蔓延するエイズ。親を亡くした子どもたちは、発砲スチロールを燃やしたガスを吸って飢えを紛らせます。安月給の生活に追い込まれた男たちは、持ち込まれた武器を使って戦争することを望みます。軍隊の方が、給料がいいからです。
私たちは、スーパーでナイルパーチの切り身を買い、あるいはその白身魚フライの入ったコンビニ弁当を食べています。そんな時、地球の反対側に起きていることと私たちの食はつながっていることを、映画は伝えています。監督は、このような現象は一例にすぎないと訴えています。私たちが無造作に使う割り箸などはどこから来ているのか。そのために、南の国の森とそこに住む人たちの生活はどうなっているのか。想像してご覧なさい…。
垂直分業はさまざまな国際法や世界銀行などの国際機関によって守られ、合法的に行われています。それは、二つの格差をますます拡大させています。豊かな国と貧しい国の格差、そして、国内の豊かな人と貧しい人の格差。監督は、「貧しい国の指導者たちは自国の現実を知らなさ過ぎる」と言っています。“人権の普遍性”“人間の平等”を建前として言うだけではなく、本音として実現するにはどうしたらよいか、真摯に向き合わなければならない時代になっています。
【映画情報】
制作:2004年 フランス/オーストリア/ベルギー
監督:フーベルト・ザウパー
原題:Darwin’s Nightmare
時間:112分
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