*

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (23) 『ピエロの赤い鼻』

公開日: : 最終更新日:2025/09/24 シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (23)
『ピエロの赤い鼻』
(初出2004年10月11日掲載 Y.M.記)

ピエロの赤い鼻

「笑いは最強の武器だ」

少し昔の物語。フランスの片田舎の小学校教師のジャックは毎週日曜日になると赤い鼻を付けたピエロを演じて皆を笑わせている。しかし多感な年頃の息子のリュシアンはそれが嫌でたまらない。
ジャックの親友アンドレはリュシアンに第二次世界大戦時ドイツ占領下の哀しくも愛に溢れた話を話して聞かせる。
にわかレジスタンス運動に身を投じたジャックとアンドレたちはドイツ軍の捕虜となる。彼らは「穴」に閉じ込められて死の恐怖に怯える。
そんな時“彼”が現れた。彼は赤い鼻を身に付け、道化を演じ始める。
彼は彼らに語りかける。「生きている限り希望がある」、と。“彼”は敵であるドイツ兵であった・・・。

終戦前夜という混乱した時期を、笑いという間接的な方法で、よりシンプルに、人間味豊かに描いている。
ピエロであるこの兵士は、芸術、夢と笑いの持つ力強さによって、戦争という現実から引き離し、人質たちが抱える死の恐怖を紛らわせる。

主題歌はシャルル・トレネの名曲「よろこびの歌」“Y’a de la joie”。日本語で言うと「幸せはどこにでもある」とでもいうところだろうか。
「笑いは最強の武器だ」
父はどんな気持ちで道化を演じていたのだろう。
権力に迎合しなかったドイツ兵のヒューマニズムは、今の時代に失われつつある“人間の気高さ”である。

この映画のエピソードで出てくる「穴」は監督のジャック・ベッケルが、同じく映画監督である父、ジャック・ベッケルの往年の名作「穴」に捧げたオマージュでもある。
また、製作はジャン・ベッケルの愛息ルイ・ベッケル。そして、父の仮装はピエロを演じたドイツ兵へのオマージュだろう。

大きな英雄はいないが小さなヒロイズムのハーモニー。普通の人々の戦争物語。庶民が示したささやかな勇気。
名もない英雄たちは知られることもなく歴史に埋もれていってしまう。道化を演じるジャックは名もない英雄たちの遺志を継ぐ行為でもあるのだ。
いつの時代にも永遠に存在しているはずの(失われつつある)父と子の、人間と人間の物語を終戦前夜のエピソードと相まって笑いとドラマの間を行き交いつつ描く、人間賛歌のフィルムである。

【原題】Effroyables jardins
【製作】2003年 フランス
【監督】ジャン・ベッケル
【原作】ミッシェル・カン
【出演】ジャック・ヴィユレ/アンドレ・デリュソリエ/ティエリー・レルミット/ブノワ・マジメル

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

関連記事

記録映画「時代(とき)を撃て・多喜二」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (57) 『時代(とき)を撃て・多喜二』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (57) 『記録映画「時代(とき)を撃て・多喜二」』 (初

記事を読む

shirouo

シロウオ 原発立地を断念させた町

故郷を、自然を、仕事を、そして家族を守りたい―原発反対運動を成功させた人々の証言ドキュメンタ

記事を読む

23アンナとロッテ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (33) 『アンナとロッテ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (33) 『アンナとロッテ』 (初出2004年11月22日

記事を読む

第39回「ジョン・ラーベ」20171210

ジョン・ラーベ

映画「ジョンラーベ」 【上映情報】 『ジョン・ラーベ 南京のシンドラー』(201

記事を読む

ハトは泣いているオモテ

ハトは泣いている 時代(とき)の肖像

ハトは泣いている 時代(とき)の肖像 「公正中立」って何だ?民主主義って何だ?浮き彫りにされるキナ

記事を読む

mangekyo

憲法万華鏡

いま、「憲法」をテーマに映像で何が表現できるのだろうか? 様々な人々が様々な方法で「憲法」をテ

記事を読む

kenpo_chirashi

中高生のための映像教室 憲法を観る

中学生の皆さん。高校生の皆さん。憲法って何でしょうか?憲法って何のためにあるのでしょうか?

記事を読む

173ヘレンケラーを知っていますか

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (172) シネマ「ヘレンケラーを知っていますか」(初出2007年4月2日掲載)

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (172) シネマ「ヘレンケラーを知っていますか」 (初出

記事を読む

20211121憲法を考える映画の会「子どもたちの昭和史」オモテ

第62回憲法を考える映画の会『子どもたちの昭和史 第1部 大東亜戦争 第2部 15年戦争と教師たち』

第62回憲法を考える映画の会『子どもたちの昭和史』 【上映会情報】 第62回憲法を考える

記事を読む

戦場ぬ止み

戦場ぬ止み

戦場ぬ止み 監督:三上知恵 2015年 日本 129分  

記事を読む

ad

ad


「憲法映画祭2026」20250418(20260222入稿時原稿)差し替え用オモテ
憲法映画祭2026

憲法映画祭2026(4月18日) 第87回憲法を考える映画の

エマニュエルの贈りもの
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (189) 映画『エマニュエルの贈りもの』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (189) 映画『エマニュエル

51nYziXkjxL._AC_UF8941000_QL80_
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (188) 映画『TOKKO-特攻-』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (188) 映画『TOKKO-

187映画『イラク―狼の谷―』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (187) 映画『イラク―狼の谷―』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (187) 映画『イラク―狼の

映画『それでも生きる子供たちへ』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (186) 映画『それでも生きる子供たちへ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (186) 映画『それでも生き

第3回東京平和映画祭
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (185) 映画「第4回東京平和映画祭」のご案内

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (185) 映画「第4回東京平

→もっと見る

PAGE TOP ↑