憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (213) 映画『4分間のピアニスト』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (213)
映画『4分間のピアニスト』
(初出2007年12月3日掲載・H.T.さん記)
今年のドイツ映画賞で最優秀作品賞(ゴールド)を受賞した話題作。クラシック音楽を素材に、強烈な個性のぶつかり合いを通して自分だけにしかない自由を創造していく、ドイツらしい激しい映画です。
元ナチスの収容所だったドイツのある女子刑務所。グランドピアノとともに、老女性ピアノ教師クリューガーがやってきます。囚人への情操教育のためです。彼女は、かつてはフルトヴェングラーにもその才能を賞賛された著名なピアニストでした。しかし、第二次大戦とナチスによる過酷な環境は、彼女のピアニストとしての夢を断ちます。生涯愛そうとした人にも先立たれ、二重のトラウマを背負う彼女には孤独さが漂います。
クリューガーはそこで、殺人を犯して服役している少女ジェニーに出会います。暴力をふるい、反抗的で刑務所随一の問題児のジェニー。彼女は、幼児の頃からピアノを弾いていましたが、養父に虐待され、恋人の罪をかぶった過去を持っていました。
クリューガーは、板のようなものに鍵盤を1つ1つ丹念に描き、音の出ないピアノを弾くジェニーの指さばきに、驚愕します。そして、ジェニーの音楽の才能を開花させることに、葬り去ったはずの自らの夢を託し、コンテスト出場・優勝を目指して厳しいレッスンを始めます。しかし、反抗的で決して妥協しないジェニー。クリューガーも頑固そのもの。“そんなのクラシックじゃない”。養父から強要されたジェニーの弾くクラシックは、クリューガーには自己表現などとは程遠いものでした。
音楽とは、自分だけにしかないものを創造するもの。それを引き出そうとするクリューガーの厳格さと、荒々しいジェニーとの格闘が続きます。クリューガーは、果たしてジェニーの心の奥底に眠る、“これが私だ!”というものを呼び覚ますことができるのか。それはまたクリューガー自身の人生最後の賭けでもあります。憲法13条が規定している「個人の尊重」(ドイツ基本法1条の「人間の尊厳」)を深いところで追求する、二人の魂の交流が見ものです。
最後の「4分」は劇場で、シューマンのピアノ協奏曲イ短調をお聴きになってください。
【映画情報】
製作:2006年 ドイツ
監督:クリス・クラウス
原題:VIER MINUTEN
時間:115分
出演:モニカ・ブライブトロイ/ハンナー・ヘルツシュプルング/スヴェン・ピッピッヒ/リッキー・ミューラー
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