憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (230) 映画『トゥヤーの結婚』
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映画『トゥヤーの結婚』
(初出2008年3月31日掲載・蓼沼紘明 記)
中国の内モンゴル自治区に住む、モンゴル民族の女性トゥヤーの物語です。羊を放牧した大草原を、らくだや馬で勇壮に疾走するトゥヤー。監督は、この地に生まれた母親を持つワン・チュアンアン。モンゴル文化が大好きだ、だからこそ消え行く文化を映像に残したいという監督の想いから生まれました。2007年のベルリン国際映画祭でグランプリの金熊賞を受賞した名作です。
トゥヤーは、ダイナマイト事故で下半身が麻痺した夫バータルと、幼い2人の子供を抱えて僅かな畑も耕しています。かつては青々としていた草原も、今では砂漠に浸蝕され、水も数十キロ離れた井戸まで汲みに行きます。過酷な労働と自然で、トゥヤーの身体も変調を来たします。自責の念にかられ、絶望するバータル。見かねた義姉は、トゥヤーに離婚を勧めます。「再婚して幸せになりなさい」。
このままでは皆が共倒れになることは明らかです。トゥヤーは生活のために、離婚し働ける男性と再婚しようとします。バータルも同意します。働き者で面倒見のよいトゥヤーのもとには何人もの求婚者が現れます。しかし、彼女は夫や子供たちのことが見捨てることができず、条件を出します。「バータルと子供たちと一緒に暮らして養ってくれるならば、求婚を受けます」。
愛しながらも離婚せざるをえない彼女と無口なバータルをカメラは優しく映します。細やかな日常描写、あふれるユーモア。おカネがあっても人情のないものは拒否するトゥヤー。
やがて彼女は意外な選択をします。ラストシーンは哀しみとささやかな幸福・祝福と笑いに彩られます。モンゴル語で“トゥヤー”とは、“光”という意味です。
中国の映画らしく、政治的な主張は表には出ていません。しかし、“どれかを捨てる”“捨てる必要性のあるものは捨てる”というのでなく、“どちらも守り、救う”という「大地に生きる女」トゥヤーの高潔な生き方は、中国にとってかけがえのない大事なものを暗示しているようです。このことは、日本そして、世界中に普遍的な“光”を示しているように思えます。
なお、砂漠化のため、都市に移り住むことを余儀なくされているモンゴル民族も少なくありません。強制移住もあります。映画撮影に使われた場所の住民たちも、今は移住したとのことです。
【映画情報】
製作:2006年 中国
監督:ワン・チュアンアン
時間:96分
主演:ユー・ナン
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