憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (170) 『約束の旅路』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (170)
『約束の旅路』
(初出2007年3月19日掲載・H.Tさん)
アフリカ、イスラエル、フランスにまたがって、民族、宗教、国境の壁に挑みながら逞しく成長、自立していく青年の叙事詩です。
エチオピアの山中に、ユダヤの地に「帰還」することを夢見るユダヤ人の集団が住んでいました。彼らは、1984年、旱魃に襲われた山中から、スーダンとの国境にある難民キャンプに逃れて行きます。イスラエルとアメリカによって実行された8000人を集団移住させる「モーセ作戦」という史実に基づいています(この作戦では途中襲撃や飢餓で4000人が死亡しました)。その中に、キリスト教徒の母子がいました。母親は、別離に耐えて、息子のシュロモを仮の母に託してイスラエルに向かわせます。ユダヤ人だと偽って。
シュロモは、イスラエルでリベラルな夫妻の家に養子として迎えられます。イスラエルではエチオピア系ユダヤ人を正式な教徒と認めないなど国内での紛争が勃発。シュロモは母を置き去りにしてしまった自分自身への怒りと哀しみ、差別と偏見の中で身分を偽ることによるストレスと苦悩などを胸に抱えながら成長してゆきます。やがて、「黒人でもよい。あなたを愛した」という恋人に出会います。感動的な場面です。
シュロモはイスラエルの徴兵を拒否してフランスに渡ります。医者になってアフリカの難民を助け、実母を探すために。
「約束の地」は苦難に満ちたものでした。しかし、その中でシュロモが自分らしい生き方を追い求める姿は共感を呼びます。「今は人種や民族で互いを区別しているが、ユダヤの教えでは人は他者と歩みよることによって、一人前の人間となる」。
登場する4人の女性―実母、仮の母、養母、恋人―の強い愛がシュロモを支える視点からも見ごたえがあります。とかく外から見がちなイスラエルという国を、内部から理解するうえでも勉強になるでしょう。
【映画情報】
製作:2005年 フランス
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
原題:Va、vis et deviens
時間:149分
出演: ヤエル・アベカシス /ロシュディ・ゼム/モシェ・アガザイ/モシェ・アベベ/ シラク・M・サバハ
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