憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (157) 『それでもボクはやっていない』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (157)
『それでもボクはやっていない』
(初出2007年1月15日掲載・H.Tさん/H.Oさん記)

| 今回は2人のご案内を掲載します。 | |
周防正行監督による、「Shall we dance」以来11年ぶりの作品です。日本の刑事裁判の仕組みを端的に理解するのに絶好の作品だと思います。「日本の裁判とはこういうものですよ、ってことを間違いなく正確に伝えることに重点を置いた」という監督の強い使命感が結実しています。しかも、「エンターティンメントとして面白がらせようという意識は全くなくて、ただ事実を重ねることしか考えなかった」というスタンスにもかかわらず、エンターティンメントとしても十分に成功していると評されています。裁判官の顔が見え、キャラクターが分かる、という点でも他のテレビドラマや映画にはないものです。 26歳のフリーター・金子徹平(加瀬亮)は、就職活動で会社面接に向かう満員電車の中で、女子中学生に痴漢と間違えられます。話せばわかってもらえると思って、駅事務室に行きますが、そこでは何も聞かれずに簡単に警察官に引き渡されてしまいます。警察での取調べでも「やってない!」と無実を主張し、具体的な言い分を主張しますが、その調書も取ってもらえず、勾留されてしまいます。検事もまた、犯人だと決め付けた型どおりの取調べで起訴します。でも鉄平は、やってないのだから裁判官ならわかってくれる、と思って裁判に臨みます。さて、どんな裁判になるでしょうか…。 犯人でないのに犯人とされ、刑罰を受けることは国家権力による最大の人権侵害の一つです。そのため、憲法31条以下では、刑事裁判における適正な手続を保障しており、被告人は裁判所で有罪とされるまでは無罪と推定されることは、根底となる原理です。そこから、検察官は、合理的な疑いを入れない程度に有罪を立証しなければなりません。映画の冒頭に「10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜を罰するなかれ」」の字幕が出ます。しかし、裁判の実状は違います。特に、物証の乏しい痴漢事件のような場合は、被告人とされた側が自分の無罪を立証しないと、有罪とされ「冤罪」となる可能性が高くなっています。憲法から導かれる原則の逆転現象です。結果として、起訴された事件の99.9%が有罪になる日本の司法があります。 裁判を通して、徹平も新人弁護士 (瀬戸朝香)も成長します。すっくと立って判決文を読み上げる裁判官を見据える徹平。そこには、裁かれる被告人でなく、司法権を裁く主権者の姿があります。奥深い作品です。 映画のパンフレット(600円)にも、逮捕・留置場から判決に至るまでの流れが弁護士や監督によって詳細に解説されています。合わせて参照すると、「裁判そのものについての映画をつくった」という監督の意図がより理解でき、大変勉強になります。 |
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ほとんどの人は自分が犯罪者になって裁かれるとは思っていないでしょう。しかし、誰もが、突然逮捕され、裁判にかけられ、有罪になる可能性があるのです。決して犯罪を犯していないのに有罪になる可能性があるのです。この映画は、ある青年が電車の中で痴漢と間違えられ、痴漢の被害を受けた女子中学生から訴えられるという「事件」がおこり、その「事件」が法廷でどのように裁かれたのか、という物語です。 【映画情報】 |
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