*

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(279) アニメ映画『動物農場』

公開日: : シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(279)
アニメ映画『動物農場』
(初出2008年12月29日掲載・蓼沼紘明 記)

poster

 原作は、『1984年』などで知られるイギリス人の作家ジョージ・オーウェルの同名の小説。1954年、イギリス初の長編アニメです。脚本・監督を担当した「ハラス&バチュラー」といえば、1940~70年代にかけて、ヨーロッパで最大、かつ最も影響力のあるアニメーションスタジオでした。半世紀以上経って、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーが日本に初上陸させました。なぜ今?

残酷で大酒のみの農場主に虐待されているある荘園農場。老いた豚メジャーは、牛、馬、豚、羊、鶏、アヒルなど動物たちに奮起を促して息絶えます。「皆よ。生まれた頃の幸せな夢を覚えているか?君たちのこの扱われ方は何だ。未来はどうされるか知っているか」。動物たちは、2匹の有能な豚スノーボールとナポレオンをリーダーとして革命を起こし農場主を追放して自ら農園の主人公になります。「すべての動物は平等である」という理想を掲げ、懸命に働き農作物は豊かに実ります。ある日スノーボールは新しい計画を投票で決めようと提案します。しかし、それを嫌ったナポレオンがスノーボールを倒します。獰猛な番犬たちと太鼓持ちの豚を従えて。やがてナポレオンをリーダーとする豚たちは、農場主の住居に移り住んで贅沢に暮らし、他の動物たちを支配し酷使します。はては献身的に働いた馬ボクサーが事故で労働不能となるや、人間に売却して屠殺場に送ってしまいます。納屋の壁に書かれた戒律は、いつの間にか次のように書き換えられていた。“すべての動物は平等である。しかしある動物はもっと平等である”さて、他の動物たちは‥‥。

これは、当時のソ連を批判した寓話です。アニメ制作の資金を提供したのはCIAです。
ハラス&バチュラーにもこのことは伏せられていました。スノーボールはトロッキー、ナポレオンはスターリンという説が有力です。しかし、現在、この映画はソ連型社会主義の批判に止まらない普遍性を持つものとして受け止められています。権力を掌握した者は腐敗し、独裁的になり、さらには巧妙に法律を変え、人々を搾取するという人間に対する懐疑であり、このことは資本主義であっても何ら変わりません。まさに、憲法は権力を縛るためにあるという立憲主義の思想をシャープに伝えています。

映画を日本に紹介したジブリの宮崎駿監督はこう語っています。「今の世の中だと思えばいい。複雑になっているけど、労働者がいて収奪者がいるという仕組は変わっていない。」(11月10日付けスポーツ報知)。「今、日本の労働問題で一番問題になっているのは、人材派遣会社とか臨時職員とか、労働者の多くがきわめて不安定な状態にさらされていて、一回社員になり損なうと、もうずっとワーキングプアの状態で、それは自己責任だってことになっているけど、そういう世の中っていうのは、「動物農場」の後半のあの豚さんたちがお金数えている状況とまったく同じ。‥‥セレブって豚のことでしょ。今、豚は太ってないんだよね、ジムかなんかにせっせと通ってスマートだったりするから。」(公式サイトでのコメント)。

映画は最後に言っています。「何度でも立ち上がる権利がある」。

【映画情報】
製作:1954年 イギリス
日本公開: 2008年12月20日
時間:74分
原題:ANIMAL FARM
監督・脚本: ジョン・ハラス / ジョイ・バチュラー
原作: ジョージ・オーウェル
脚本: フィリップ・スタップ / ローサー・ウォルフ

作品公式ホームページ:https://www.ghibli-museum.jp/animal/

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

関連記事

にがい涙の大地から

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (43) 『 にがい涙の大地から』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (43) 『にがい涙の大地から』 (初出2005年2月28

記事を読む

919H43bKRFL._AC_UF8941000_QL80_

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (205) 連続テレビドラマ『ジャッジ―島の裁判官 奮闘記』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (205) 連続テレビドラマ『ジャッジ―島の裁判官 奮闘記』

記事を読む

39パッチギ!

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (108) 『ナイロビの蜂』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (108) 『ナイロビの蜂』 (初出2006年6月12日掲

記事を読む

平成狸合戦ぽんぽこ

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (12) 『平成狸合戦ぽんぽこ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (12) 『平成狸合戦ぽんぽこ』 2004年8月23日掲載

記事を読む

122対馬丸―さようなら沖縄―

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (122) 映画「対馬丸―さようなら沖縄―」(8/15テレビ放映)

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (122) 映画「対馬丸―さようなら沖縄―」(8/15テレビ

記事を読む

イキガミ

法情報Now<シネマ・DE・憲法>(264) 映画『イキガミ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(264) 映画『イキガミ』 (初出2008年10月6日掲載

記事を読む

145明日へのチケット

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (146) 『明日へのチケット』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (146) 『明日へのチケット』 (初出2006年11月2

記事を読む

第49回「天から落ちてきた男」190302入稿用

映画「天から落ちてきた男」

映画「天から落ちてきた男」 【上映情報】 第49回憲法を考える映画の会 日 時:2019年

記事を読む

流血の記録 砂川1

映画「流血の記録 砂川」

流血の記録 砂川 1957年制作 日本映画(ドキュメンタリ−) 57分 亀井文夫 監督作品

記事を読む

戦ふ兵隊

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (95) 「亀井文夫が見た日本ドキュメンタリーの原風景」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (95) 「亀井文夫が見た日本ドキュメンタリーの原風景」

記事を読む

ad

ad


第90回「新・戦場の兵士」案内チラシ(2026年10月18日)20260916入稿時原稿オモテ
第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』

第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』 第9

poster
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(279) アニメ映画『動物農場』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(279) アニメ映画『動物農場

チェチェンへ アレクサンドラの旅
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(278) 映画『チェチェンへ アレクサンドラの旅』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(278) 映画『チェチェンへ 

mv37621_8518906685fbb18e63c64d0829895e94806d7
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(277) 映画『いのちの作法―沢内「生命行政」を継ぐ者たち―』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(277) 映画『いのちの作法―

映画『私は貝になりたい』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(276)  映画『私は貝になり

アムネスティ・フィルム・フェスティバル
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(275) 「アムネスティ・フィルム・フェスティバル2009」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(275) 「アムネスティ・フィ

→もっと見る

PAGE TOP ↑