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憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (90) 発言集「映画人、九条への想いを語る!」

公開日: : イベント, シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (90)
発言集「映画人、九条への想いを語る!」
(初出2006年2月27日)
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*2006年のこのページに紹介された「映画人、九条への想いを語る!」の記事のリンクは切れていましたので、
現在の「映画人九条の会」のページから転載させていただきます。

映画人九条の会Mail No.11

昨年12月13日、「映画人九条の会一周年集会/映画人、九条への想いを語る!」が、東京・文京シビック小ホールで行われました。

「第一部/映画監督、九条への想いを語る」に登場した大澤豊監督は、少年時代の戦争体験に触れながら「憲法を守るために自分に何が出来るかを問い、この映画人九条の会の呼びかけ人に名を連ねた」と語るとともに、「いま、憲法を題材にした映画を作ろうと準備している」と語りました。

神山征二郎監督は第1回日中シナリオ・シンポジウムに参加した経験や、その中国杭州の西湖に元岐阜市長・松尾吾策氏が建てた「日中不再戦」の碑を紹介しつつ、小泉首相を痛烈に批判、世の中にとっては個人の力ではなく、法というものが一番大事だということを強く訴えました。

「第二部/アニメ作家、九条への想いを語る」では日本を代表する人形アニメ作家の川本喜八郎さんが、「折口信夫原作の『死者の書』(2月11日から岩波ホールで上映)を作ったが、これは魂を鎮める映画。靖国神社と違い、敵の魂も鎮めるのが古来からの魂鎮めの形だ」と述べるとともに、「折口博士は終戦のときに『日本はアメリカの十字軍のような宗教的な情熱に負けた。単に物量に負けたと思っていたら、日本の50年後は危ない』と言われたが、本当にそうなってきた」「あと60年経って、60年前に日本は一番危ない決定をしたと言われやしないかが一番の心配だ。アニメ界の中でも九条の会を広げたい」と語りました。

アニメ監督の高畑勲さんは、「イタリアのアニメ祭に行ってきたが、ヨーロッパでは世界の日本化(現実がつまらないから映像の中に自分を取り込む)が問題になっていた。問題は日本のアメリカ化。戦争する国に、ということだけでなく、生活の全面でアメリカ様式が押し付けられ、それを拒否できない。日本人は自分で責任を追求したことがない。あなた任せ。9条を改正しても大したことじゃないと思っている人に、それが自分の身に降りかかってくるということを、どう伝えていくかが一番の問題」と語りました。

「第三部/国際的視点から、九条への想いを語る」では、作家で字幕翻訳者の池田香代子さんが登場、ジョーン・バエズが歌う「イマジン」を流し、この対訳を読んだ若い人が「イマジンって日本国憲法じゃん」と言ったことを紹介。「日本国憲法前文は英文では We から始まっている。我ら日本国民は、です。憲法は最初から最後まで私たち国民のセリフなんです」「今の改憲議論には乗れません。憲法は私たちが政府に命令しているセリフだということを解っていない人たちがいじろうとしているから」と語り、若者にヒットしているSMAPの「Triangle」の歌詞の一節を読み上げて「あきらめることはない」と訴えました。また質問に答えて、「意見の違う人を説き伏せるのではなく、話を繋げることで信頼を築こう」と語りました。

記録映像作家のジャン・ユンカーマンさんは、「日本は戦争しない国というイメージが世界に広まっているのは大きな財産だ」「なにごとも武力で解決しようとするアメリカに従うのか、9条に基づいてアジアに平和を築くのか、この二つの選択を示して話せば、みんな正しい選択をすると思う」と語りました。

この集会は約170人の参加で、満席にはなりませんでしたが、「大変内容の濃い、有意義な集会だった」などの感想が多く寄せられました。一周年集会に寄せられた映画人のメッセージと、「集会の訴え」は以下の通りです。

(現在、一周年集会の報告集を作成中です。完成次第お送りします。ご期待ください。)

12・13映画人九条の会一周年集会へのメッセージ(順不同)
脚本家・ジェームス三木
 九条は世界に向けての日本の決意表明です。アメリカの都合で、世界を裏切ってはなりません。
映像作家・鎌仲ひとみ
 九条は単なる条文ではない。一旦それを失ってしまえば私たちの心の平和も失われる。そして、再び私たち自身の手が血塗られることになる。すでにイラクの人々の流された血を浴びているのです。
女優・秋野暢子
 仕事のため出席できません。次の機会にはぜひうかがいたいと思っております。よろしくお願い致します。
映画監督・松井久子
 大変申し訳ありませんが、当日海外出張中の予定で出席することができません。集会のご成功をお祈りしています
俳優・吉永小百合
 九条のおかげで、私達は60年間戦争に巻き込まれなかったのです。世界中が九条のような憲法を持てば、戦争は起こらないのです。平和を願い、平和を守る勇気を持ち続けましょう。
俳優・倍賞千恵子
 戦後六十年、日本が平和だったのは憲法第九条があったからだと思います。戦争の無い平和な国を望みます。
映画作家・大林宣彦
 素晴らしくもあり、恐ろしい事でもありますが、ぼくたちが20世紀、映像の世紀の中でスクリーンに描いた事は、総て実現してしまいました。良くも悪くも、夢は実現するのです。
2001年9月11日のあの映像が、20世紀の映像の一つの集大成であったとするなら、実は誰もが願い望んでいた殺戮と破壊の映画的娯楽の夢がテロリストたちに盗まれ、現実となったとするなら、21世紀はぼくらがスクリーンに平和をのみ描き続けたらどうなるかを考えるべき時ではないか。
イラク戦争の間、新聞は毎日、「まるで映画のような」とその戦争の現実を伝えていた。では21世紀、ぼくらは「まるで映画のような」平和の日日の創造を夢見る事は出来ないか。
スクリーンとは、巨大な自然界の欠落部分である。自然界にはあの様な空白は無い。あれは人間が作り出したもの。神ならぬ仏ならぬ人間が、神が創られ仏が願われた自然界と同様のものを、人間よ、お前は果たして創造し得るのか、を試される場所。この空白の欠落部分をいかに埋めるか、がつまりは芸術行為である。
20世紀、「自然は芸術を模倣する」とぼくらは詠んだ。人間は知力によって芸術を作るが、自然は只無自覚にそこに在ると。しかしどうか。今自然が人間の作った芸術を模倣すれば、自然界は滅亡し果てるであろう。今こそぼくらは、「芸術は自然を模倣する」とぼくらの創造行為をごく当たり前の場所に戻すべき時ではないのか。
自然界の意志をもう一度よく考え、その循環の輪の中にこそ、今ぼくらは戻る。その契機にこそ、今ぼくらの芸術は、映画は役立つべきではないか。
映画は少しずつだが、世界をリードする。映画にはそういう力がある。ぼくらが「スターウォーズ」ではなく、「スターピース」をこそ真に創造し、それが人びとに諸手を挙げて迎えられる時、世界は果たしてどのようなものになっているのか、を想像する事は、創造者たちの総ての願い、悦び、誇り、希望ではないだろうか。
考え続ける事、創り続ける事こそが、その第一歩を踏み出す力と美しさとになるのだ。
ぼくらは映画の力と美しさとを、心から信じている。
21世紀、映画がやるべき事、やらなければならぬ事は、一杯ある筈。そんな事を、今日一つでも、ちょっと考えてみる事が大切なのではないでしょうか。
ユーリー・ノルシュテイン(ロシア・アニメーション監督)/児島宏子訳
 今は亡き人々の肖像が悲劇の絵の中からわたしたちを見ている。かれらは何を考えているのだろうか?
音楽の中には実際、現実として悲劇や幸福がこもっている。私たちはその音に絶妙な響きを聞く。文学者たちは言葉によって人生の記憶をみつける。私たちはその記憶を読み、後に続く世代へと伝えていく。音、言葉、色彩の中に人間生活のユニークさがある。
日々政治家が撒き散らすことどもは、自分たちの行為の単なる上っ面に過ぎず、それは後の巨大な汚水溜めになるだろう。
日本国憲法第9条廃棄──これは記憶の喪失であり、愛国心高揚に国民を結びつける安手でにせの手段であり、人々の個性剥奪、無責任化であり、人々を巨大な精神病院の患者に変えることにつながる。なぜなら、政治家は人々を、自分が必要とする記憶と方向のみに向かわせ、健全な記憶を失わせることに心を傾けるからだ。このような深刻な事態を前に、今こそ誰もが声を一つにして危機を回避しよう。
第9条廃棄──これは社会の分裂を呼び起こすだろう。読み、聞き、見ることとは、自分の胸の内に記憶を保持することなのだ。人々に記憶が生きている限り、誰もがこのような政治の動向に対して同意できないだろう。
第9条廃棄──これは政治家がゆっくり生きているものすべてを抹殺することの始まり。権力の座に就いた幸福なものはあれこれ期待するだろう。しかし彼は幸福ではないのだ。権力欲は大地を焼き焦がすことで終わりを告げるから。そして人間社会は再び政治行為の結果としての汚水溜めを撒き散らすことを余儀なくされよう。
12・13映画人九条の会一周年集会での訴え
 昨年11月24日に517名で発足した映画人九条の会は、丸一年を経過して会員数は1097名になり、運動も大きく広がってきました。

しかし自民党は11月22日の結党50周年大会党大会で、憲法9条第2項を削除して「自衛軍」の保持を明記した「新憲法草案」を正式に発表しました。2年目を迎えた人九条の会としても、いっそう活動を強めなければなりません。その決意を込めて、以下のことを皆さんに訴えます。

  1.  なによりも「九条の会」アピールを、映画人、映画ファン、映画関係団体の中に広め、現在1100名の映画人九条の会の会員を大幅に増やす。新たな加入の訴えも出していく。また、各地や職場、関係団体の中に「○○映画人九条の会」を作ることを進める。
  2.  自民党の新憲法草案の狙い(日本を戦争ができる国にするための九条改悪であり、そのために「公益と公の秩序」を盾に国民を縛りつけようとするものであることなど)を明らかにするために、さまざまな学習会や宣伝活動を展開し、改憲キャンペーンをはね返す。
  3.  映画人らしい知恵を集めて、今年も「講演と映画のつどい」などを旺盛に開催する。みんなで考え、映画人九条の会第2期の運動としてさらに一歩前に出た行動を起こす。
  4.  一人ひとりが、ワッペン、署名、政治家やマスコミへのハガキ運動、集会・デモへの参加など、九条改憲に反対する意思をさまざまな形で表明する。
  5.  来年1月25日(水)には、「護憲派のための軍事講座/自衛隊が《自衛軍》になるとどうなる?」(講師/明治大学教授・山田朗、会場/全水道会館、日時/1月25日(水)18:45~)を開催する。これを必ず成功させる。
  6.  九条の会や、マスコミ九条の会など全国の九条の会と連携して情報や経験を交流しあい、ネットワークを広げ、壮大な国民運動の一翼を担う。

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