憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (30) 『ブラックホーク・ダウン』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (30)
『ブラックホーク・ダウン』
(初出2004年11月22日掲載 H.T.さん記)
アフリカ大陸北東部の「アフリカの角」と呼ばれる地域にあるソマリア、エリトリア、ジプチは19世紀にイギリス、フランス、イタリアの植民地になり、独立後も多民族併存状況や、単一民族分断状況(ソマリア)が残存しているため、紛争が絶えない。冷戦時代、アメリカはエチオピアを支援するソ連に対抗してソマリアに大量の武器を供与した。アメリカは、冷戦終結とともに戦略的価値の低下したソマリアから手を引いたが、残された武器はソマリアの内戦を激化させた。
冷戦終結後機能し出した国連は、1993年、アメリカ軍を主力とする「平和執行部隊」をソマリアに派遣した。
「平和執行部隊」は、それまでの「平和維持活動」(PKO)が紛争当事国の同意を条件としたものであったのと異なり、強制的に介入するものだった。
米軍は、敵対するアディード将軍の本拠地への奇襲作戦に失敗し、数百人のソマリア人と18名の米軍兵士の死者を出す結果となった。
この映画は、この時の米軍特殊部隊の軍事作戦を描いた壮絶なドラマである。
米軍ヘリ(ブラックホーク)の撃墜、米兵を殺そうと殺到する民兵など、戦場の凄まじさが映し出される。
1993年の戦闘では、米兵の死者がソマリア市民によって引きずり回されるシーンがテレビによって全米に放送された。
その結果米国内で撤兵論が急激に高まり、クリントン政権はソマリアから完全撤退し、軍事介入は失敗に終わり、国連の「平和執行部隊」も挫折する。
その後アメリカが、「国連中心の国際貢献」から、軍事同盟強化の重視へと方向転換するきっかけともなった歴史的な事件を扱った映画としての意義がある。
この映画は雑誌では、「ソマリアで起きた戦争の真実」というタイトルで紹介されている。
しかし、米兵の勇敢さを克明に描写しているのに対して、ソマリアの民兵を野蛮に表現するなど、アメリカ軍サイドに立った戦争映画であるとも評価される。
制作者の視点に埋没すると、単なるアクション映画、戦争映画にすぎないとも言えよう。
アメリカは異国での流血から何かを学んだのか、批判的に見る眼を養うための一つの材料を提供している映画と言えるかもしれない。
【年代、国】 2001年 アメリカ
【原題】 BLACK HAWK DOWN
【監督・制作】リドリー・スコット
【出演】 ジョシュ・ハートネット ユアン・マクレガー トム・サイズモア
【受賞】アカデミー賞編集賞、音響賞
ad
関連記事
-
-
いのちの山河 日本の青空Ⅱ
「日本国憲法」が施行されてから60年あまり。戦後の日本が60年以上もの間、かろうじて戦争をす
-
-
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(269) 映画『EAGLE EYE ― イーグル・アイ』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(269) 映画『EAGLE EYE ― イーグル・アイ』
-
-
10年後の空へ OKINAWAとフクシマ
10年後の空へ OKINAWAとフクシマ 【上映情報】 ▪️上映可能 →上映会
-
-
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (25) 『笑いの大学』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (25) 『笑いの大学』 (初出2004年11月1日掲載
-
-
ショック・ドクトリン
20世紀の一時期、世界は資本主義から社会主義へ移行し、より平等な社会がやってくると信じる人々
-
-
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (229) 映画『ビルマ パゴダの影で』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (229) 映画『ビルマ パゴダの影で』 (初出2008年
-
-
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (145) 『ALWAYS 三丁目の夕日』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (144) 『ALWAYS 三丁目の夕日』 (初出2006
-
-
第80回 憲法を考える映画の会 『ガザからの報告』
第80回 憲法を考える映画の会 『ガザからの報告』 第80回 憲法を考える映画の会 『ガザから
-
-
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (10) 『ロング・ウォーク・ホーム』
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (9) 『ロング・ウォーク・ホーム』 2004年8月12日

