*

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(273) テレビ番組 『最後の戦犯』

公開日: : シネマDE憲法, 作品紹介

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(273)
テレビ番組 『最後の戦犯』
(初出2008年11月24日掲載・蓼沼紘明 記)

スクリーンショット 2026-10-05 22.11.11

12月8日の日米開戦の時期に合わせて、BC級戦犯として戦争犯罪を問われた物語が放送されます。終戦のわずか5日前の8月10日の福岡郊外。見習い士官として配属されたばかりの左田野修さん(故人)は、上官の命令で捕虜の米兵を斬首しました(油山事件)。占領軍による軍事裁判所は、左田野さんに対して、1949年10月19日、文字通り最後の戦犯として厳しい判決を言い渡しました。「捕虜を虐待したものは、上官の命令によるものであっても実行した当事者その人に責任がある」“戦争犯罪人”として。ドラマ「最後の戦犯」は、左田野修氏の手記「家族拘留三十七日」をもとに構成されたものです。ドラマの3分の1を占める裁判のシーンは、アメリカの公文書館が保管する裁判資料を調査して制作されました。

1946年の早春、戦犯として指定された吉村修(24歳)(ARATA)等に対して、元上官の加藤(石橋凌)は逃亡を命じます。責任をうやむやにしようとする加藤に対して、納得できない思いを抱えながらも、修は生き延びる道を求めて偽名で岐阜県多治見の陶器工場で職人修業の逃亡生活に入ります。修はその真面目な働きぶりで、先輩の職人・仙造(村田雄浩)や社長・岡田(中尾彬)から信頼を置かれるようになりますが、もう一人の自分を演じることに葛藤の日々を過ごします。

一方、故郷の福岡では修の母・波江(倍賞美津子)、姉・静子(原沙知絵)、妹・安子(前田亜季)たちが“戦犯の家族”として後ろ指を指されながら孤独で過酷な暮らしを強いられます。そして拘留と拷問にも等しい取調べ。静子は心労のため‥‥。

修はやがて巣鴨プリズンに収監され裁判を受けます。命令に従わずには生きられなかった自分は正しかったと信じていた修は、法廷で植民地だった朝鮮の青年が戦犯として裁かれる姿を見て、自分も戦争の「加害者」だったと思うようになります。

修のような善良な市民が被害者でありながら加害者にもなるのが戦争です。戦争の犠牲になるのはいつの時代でも庶民ですが、「だまされたから仕方がない」では済まされないのも戦争です。では、責任はどう取ればよいのか。修のような最末端の兵士は、平均して僅か2日間の裁判で処刑を含む重刑に処せられました。強制的に日本軍に組み込まれた朝鮮など植民地出身の人々も「日本人」として責任を問われました。

 アジア・太平洋戦争は、戦争それ自体の実態の解明及び戦争責任の問い方の点で未だにたくさんの課題を残していることを気付かせてくれる番組だと思います。

【放送】本放送 NHK総合12月7日(日)午後9:00~10:29(NHKスペシャル)先行放送 BS-hi11月29日(土)午後10:00~11:29
【制作】NHK名古屋放送局
【脚本】鄭 義信
【原案】小林 弘忠 「逃亡~油山事件戦犯告白録」
【出演】ARATA(あらた)/倍賞美津子/原沙知絵/前田亜季/中尾彬/田辺誠一/村田雄浩

ad

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

関連記事

横浜事件を生きて

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (98) 映画上映会「治安維持法/共謀罪」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (98) 映画上映会「治安維持法/共謀罪」 (初出2006

記事を読む

519Qb9ME1AL._AC_UF8941000_QL80_

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (227) 映画『真昼の暗黒』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (227) 映画『真昼の暗黒』 (初出2008年3月10日

記事を読む

草の乱

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (19) 『草の乱』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (19) 『草の乱』 (初出2004年9月20日掲載 H.

記事を読む

「自主制作映画見本市#2」20200113オモテ

自主制作・上映映画見本市#3

自主制作・上映映画見本市#3   と き:2020年1月13日(休・成人の日)(9:30—2

記事を読む

1930652-01

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (253) テレビ『シリーズ 証言記録 兵士たちの戦争』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (253) テレビ『シリーズ 証言記録 兵士たちの戦争』

記事を読む

love

ラブ沖縄 @辺野古・高江・普天間

米軍基地問題に揺れる沖縄の各地で繰り広げられている抵抗運動を記録したドキュメンタリー。普天間

記事を読む

164不都合な真実

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (164) 『不都合な真実』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (164) 『不都合な真実』 (初出2007年2月26日掲

記事を読む

51cQzhrgejL._AC_UF8941000_QL80_

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (215) 映画『PEACE BED ~ アメリカ VS ジョン・レノン』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (215) 映画『PEACE BED ~ アメリカ VS ジ

記事を読む

若者たち

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (117) 『映画「若者たち」三部作シリーズ上映会』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (117) 『映画「若者たち」三部作シリーズ上映会』 (初

記事を読む

ブラックブック

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (173) 映画「ブラックブック」

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> (173) 映画「ブラックブック」 (初出2007年4月9

記事を読む

ad

PREV

ad


第90回「新・戦場の兵士」案内チラシ(2026年10月18日)20260916入稿時原稿オモテ
第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』

第90回 憲法を考える映画の会 『新・戦場の兵士』 第9

no image
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(273) テレビ番組 『最後の戦犯』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(273) テレビ番組 『最後の

272リダクテッド 真実の価値

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(272) 映画『リダクテッド 

中国映画の全貌2008
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(271) 連続上映会『中国映画の全貌』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(271) 連続上映会『中国映画

ホームレス中学生
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(270) 映画『ホームレス中学生』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(270) 映画『ホームレス中学

EAGLE EYE ― イーグル・アイ
憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(269) 映画『EAGLE EYE ― イーグル・アイ』

憲法情報Now<シネマ・DE・憲法>(269) 映画『EAGLE E

→もっと見る

PAGE TOP ↑